BROTHER BATTLE


「かわいい、かわいい純」
 大きな手が頭に触れる。
 純は身体をすくませた。
「久々だな。もう成長期は終わりかと思ったけど、随分と伸びたんだな」
 久々に見る兄は片方の肩に大きなドラムバッグを下げた姿で玄関に立っていた。
 身長は随分と前に止まっていたけど、それをいうのも忍びなくて、純は、ただ、
「おかえり」とだけ呟く。
 兄との五年ぶりの再会だった。

 兄は五年前に駆け落ち同前で近所の女と家を出た。
 親とは連絡をとっていたらしいが、純は間接的に時々しか話を聞かなかった。

 どんどんとおぼろげになっていく存在。
 当時中一だった純には、年のはなれた兄の記憶がほとんどなかった。
 一緒にあそんだ記憶もあまりない。

 そんな兄が、突然「離婚」して、家に帰って来た。

 「仲良くしてね」といわれても、もういまさらという気がしないでもない。
 純はビクつくながら、今日という日を迎えた。

「でも、ホント大きくなったよなぁ。俺がしってた時はまだ俺の胸までも身長が
 なかったのになぁ」
 荷物をときながら兄は感心したように呟いた。
「でも、まだ低いほうだよ。170cmギリギリだし。兄さんはそんなに背が高いの       に」
 純も荷ほどきを手伝う。
 自分達はこんなに似てなかったっけ?と思う程、兄と自分は違った。
 兄はスポーツマンタイプでがっしりとしていて、長身だ。
 純のまわりにも、こんなタイプはいない。
「俺はスポーツやってたからだろ。純は頭がいいんだってな。母さんの自慢だろ」
 テキパキと荷物をほどいていく。
 純も手近にあったダンボールをひきよせて、ビリビリとガムテープを開いた。
「そんな、頭がいいなんて言える程じゃないよ。大学だって、指定校推薦で受かっ
たんだし」
 純はダンボールの中に無造作に手をいれて、荷物をだした。
「えっ・・?」
 中に見えたものに目を剥く。
「どうした?純」
 兄が動作をとめた純をよこからひょいと覗き込んだ。
「ああ、それか。ビックリしたんだ」
 クスクスと兄は笑って、中からひとつ、とりだした。
「お前だって、使い方ぐらい知ってるんだろ。そんなにビックリすることないだろ」
 男性器を模したソレが目の前にかかげられる。
「しっ、知らないよっ!!」
 真っ赤になって叫ぶ弟に、兄は揶揄うようにわらった。
「しらないワケないだろ。
 そんなに真っ赤になるってことは、もしかして、お前、童貞か?」
 兄の不躾な質問に、純は真っ赤になって兄をにらみつけた。
「ふーん、でも、バックバージンじゃなかったりして」
 兄の言葉にきょとんとする。
 純は大きな目を開いて兄を見た。
「あっ、訳がわかんない?お子様だなぁ」
 兄の呆れたような声。
「お子様じゃない!!」
 失礼な物言いにカッとなった純は兄にくってかかった。
「嘘嘘。ごめんよ」
「もう・・・」
 兄はクスクスと笑いながらもかかげたままのソレをひっこめる気配はない。
 完全には払拭されないイヤな雰囲気。

でもさ、折角の機会だから使い方、試してみる?」 「え?」 グイっと兄に腕を引かれる。 「折角じゃん。教えてやるよ。俺はオトコもいけるからさあ」 「なっ、なにっ?」 クスクスと笑って純を引き寄せる。 華奢な弟の身体を引き寄せて、驚く間も与えずジャージのズボンを引きずって下ろ した。 「わっ、なにするんだよっ!!」 自分よりひとまわりばかり細っこい身体が腕の中で跳ねる。 「大丈夫、大丈夫。 お前だって自慰ぐらいしたことあるだろ」 「えっ、うん・・・」 アップで迫る兄の顔に気押されて、純は頷いてしまう。 「だっかっら、それのもっとキモチいい版を教えてやるって。 知りたいだろ」 「うん・・」 反射的に頷いてしまった純に、兄はニカーと笑った。

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