(1)

乃 朔也は満足した気分で、そのマンションの分厚いドアを閉めた。もちろん、部屋を出る前に、佐原弁護士に「ありがとうございました」と一礼をすることを忘れなかった。

部屋から出ると、外の空気はべったりと肌に貼り付くようで暑かった。それでも、ようやく妻との離婚調停が和解に終わったんだ…とおもうと、その暑ささえも気にならなかった。

 

長かった。高校時代の同級生だった佐原が弁護士になっていたのが、幸いだった。だから格安の料金で離婚調停を引き受けて貰うことが出来たのだった。今も、「事務所で受け取ると、君だけ安い値段で引き受けたことがばれてしまうからね」ということで、佐原の1人住まいのマンションまで、わざわざ金を持ってきたのだった。

 

やっと、自由になれる。あの、最悪だった妻と、ようやく縁を切ることが出来る。

しかも、佐原のおかげで、慰謝料はなし・子供もいないので、養育費もなし。という最高の条件で離婚することが出来た。

朔也はウキウキとした晴れやかな気持ちで、エレベーターのボタンを押した。さすがに弁護士が住んでいるだけあって、けっこうな高級マンションだった。とても朔也には手が出ないようなマンションだ。

ほどなくして、空っぽのエレベーターの箱があがってきたので、それに乗り込んだ。エレベーターも、やはの高級マンションだけあって、最新のものだった。朔也は、馴染みのないエレベーターの中を見回していた。

佐原は最上階の13階に住んでいたから、エレベーターはどんどんと降りていく。

 

しかし、途中でその動きが緩やかになって、途中で停まった。表示をみると、10階だった。ドアがあくと、青年が立っていた。軽く会釈をして、箱の中に入ってくる。

朔也は、チラと青年の方をみた。多分、大学生くらいだろうか。ジーンズのズボンにシャツを着て、リュックを背負っていた。なんとなく、この高級マンションには似合わないような気がした。

それは、青年が、自分と同じように「来訪者」といった雰囲気をもっているせいかも知れなかった。

(そうだ……。家庭教師か何かかも知れないな。このマンションは部屋事に間取りが違うから、家族連れで住んでいる人もいる、と佐原は言っていた。きっと、この青年は家庭教師か何か。そういうたぐいのものに違いない)

朔也は勝手に納得して、エレベーターが下っていく感覚を感じて、電光表示の階数が下っていくのを見ていた。ちょうど、六階をすぎて、五階に行く途中だっただろうか。

突然、エレベーターが激しく揺れた。

「え……」

意外な動きに、朔也は声をあげて、足を踏ん張らさせた。でも、グラリグラリという横揺れは激しくて、とても立っていることは出来なかった。随分と長い間、横に揺れていた気がする。捕まるところも何もなくて、気が付けば、朔也は床の上に座り込んでいた。

しばらくグラグラと揺れたかと思うと、今度はぴったりとエレベーターが停まった。

朔也は、チラと青年の方をみると、青年も、壁を押さえて床に座り込んでいた。

 

何がなんだかわからなかった。

エレベーターの電光表示を見てみると、チカチカと点滅しているだけで、階数を表示していない。

「地震かな…」

青年の低い声が聞こえて、朔也は「あぁ、なるほど…」と思った。

突然の事だったから、びっくりしていて、朔也はまだそこまで察することが出来ていなかった。

「困ったな…。完全に停まってしまっているらしい…」

青年はスッと立ち上がると、エレベーターのボタンの方に行き、非常ボタンを押していた。

朔也も、ようやく床に手をついて立ち上がり、エレベーターのボタンが並んでいる方をみた。

非常ボタンを押せば、外部とやりとりが出来るようになっているらしい。青年はボタンをおしながら「もしもし・もしもし」と繰り返し、話しかけていた。

けれども、シンとしていて、返答はなかった。

 

そりでも、青年は何度も何度も「もしもし・おーい」などと繰りかえしていた。ただ、箱の中に、青年の声だけ空虚にひびいているようだった。階と階の間で停まってしまっているらしく、エレベーターのドアのガラス部分は真っ暗だった。

朔也は、青年を見て、ようやく少し危機感をかんじてきていた。

「閉じこめられてしまったのかな…」

ボソリと呟いたけれど。青年は、また、「もしもし・おーい」と言ってから、舌打ちをして、「ちくしょう」と呟いていた。

「地震か何かかな。閉じこめられてしまったようだね」

朔也は、青年の方を見て、話しかけるように言った。青年は、チラと視線をこちらに流した。その目の鋭いのに、一瞬、ビクリと体がすくんだ。

「そうみたいですね…。弱ったな…」

青年は呟いて、何度も非常ボタンをおしていた。けれども、シンとしたままで何の反応もない。それでも、執拗に5分くらいはそれをくりかえしていただろうか…。

軽く、階数のボタンを叩いてから、エレベーターのボタンの横に、ずるずると座った。

朔也も、つられるようにその場に座った。

 

地震で停まってしまっているならば、長期戦になる可能性もあるな…と考えていた。揺れが激しかったから、相当に大きな地震だったのかも知れない。iPhoneを取り出してみたけれど、エレベーターの中なせいか、圏外の表示になっていた。

以前、大きな地震が起きたときには、エレベーターの中に、5時間も閉じこめられていた人もいた…という話を聞いたことがある。

 

朔也はチラと時計を見てみた。ちょうど、午後9時半をさしていた。

しばらく、エレベーターの中はシンと静まりかえっていた。青年は苛々としているようで、爪を噛んでいた。重たそうなリュックは肩から外して、床の上に置いていた。朔也も、カバンをおいて、膝をたてて座っていた。

 

ただ、黙っているのも気まずいような気がして、朔也は、チラと青年の方をみた。

「弱ったね。僕は別段、これから予定が無いから良いけれど。

 でも、携帯も圏外だし。できるだけ早く動くと良いんだけどね」

青年は、朔也の方を見返した。やはり、目が鋭い…とおもった。それに、あらためてみてみると、随分と体格が良いように見えた。

「そうですね…。困るな。地震のせいなのかな…。

こういうとき、エレベーターっていうのは困りますよね。階段で下りれば良かった」

青年はボソボソと呟くように言って、点滅したままの電光表示板をみつめていた。

朔也は青年から返答があったので少し安心して、雑談でもして、少し気を紛らわせようか…という気分になってきた。

「君は、大学生かい?

「はい。A大学の四回生です。中津翔二といいます。ええと…そちらは…」

A大学といえば、国立の一流大学だ。朔也は、少し青年を見る目が変わるような気がした。

「あぁ、僕は………こういう者です」

朔也はポケットから名刺を取り出し、青年に渡した。青年は、ジッと名刺を見てから、「火乃朔也さん…」と呟いた。

A大学とはすごいね。ここに住んでいるのかい?

「いえ、友達を訪ねてきていたんです。朔也さんは、ここに住んでいるんですか?

青年は名刺をみて、名前を確認しながら、朔也の方をチラと見た。

「いや、僕も知り合いを訪ねて来たところだったんだ。お互い、災難だね」

 

それからしばらくは他愛もない雑談がつづいた。

 

待っていれば、じきに動き出すだろう…という希望があったから。しかし、大学生とサラリーマン。雑談のネタもすぐに尽きてきていた。

「でも、こんな高級マンションに住んでいる友達というのは、随分とリッチなんだね」

何気なく、朔也が呟いたときだった。

翔二の目が、キラリと光ったような気がした。

「えぇ、まぁ。変ですか?

エレベーターの中の温度は、どんどんと上がっていっているようだった。

空調が効いていないのかもしれない。ジワジワと汗が滲んできていて、朔也はスーツのジャケットを脱いで、ネクタイを緩めた。なんだか、翔二の視線が痛いように感じた。

「別に…。ただ、ここは高級マンションだからね…」

朔也は何の他意もなく呟いたつもりだったけれど。突然に、翔二の体が近づいてきた。ぴったりと密着するように体がひっついてきて、朔也は本能的に「逃げよう」としたけれど。グイと腕を掴まれて、逃げることが出来なかった。

「な……なんだい?

朔也はあまりに突然の事だったので、どう反応したらいいのか分からず、ジッと翔二の方を見た。

「実は、俺は、ついさっき、人を殺してきたところなんです。

それというのも、俺はヤクザの愛人に横恋慕してしまいましてね。

お互いに、愛し合っていたのですけれども、恋人は「ヤクザからは逃れることが出来ない。そんなことをしたら、殺されてしまう。でも、このまま、君とこうしてひっそりと会うだけの生活というのも苦しい。いっそ、死んで、来世で君と一緒になりたい」と言うので。希望通りに首を絞めて殺してきてあげたんですよ」

朔也は、突然の言葉に、一瞬頭が付いていかなかったけれど。

「ははは…。そんな冗談を言って、僕を驚かせようとしても無駄だよ…。でも、なかなかに楽しい冗談だけど…」

朔也の笑い声は、カラカラと虚しく箱の中に響いていた。

翔二が言っていることが、本当なのか、ただの冗談なのか。分かりかねていた。ただ、蒸し暑いのと、箱の中の空気が薄くなってきているような気がして、正常に頭が回らないような気がしてきていた。

「冗談だと思いますか? だったら、冗談だとおもってくれていてもいいですよ。

俺が殺したとばれたら、俺もヤクザに追われる身になってしまうんです。だから、部屋からは俺の名残を伺わせるような物は全部排除しましてね。

恋人がもっていたスマホも破壊して、IC基盤まで滅茶苦茶にしたんですよ。これで、あとはただ、帰るだけだったのに。こんに所で立ち往生させられてしまっては、俺の計画がおおきく狂ってしまう…」

翔二は独り言を呟いているようだった。朔也は、「冗談に違いない」と思っていたけれど。箱の中が暑いので、汗が滲み出してきていて、頭の中がぼんやりとしてきていた。

「朔也さんは、どこか、俺の恋人だった男に似ていますね…。特に、体つきが。恋人もあなたのように、華奢だった」

朔也の両手首を、グイと翔二が掴んできた。朔也は初めて危機感を覚えて、それを振り払おうとしたけれど。不意の事だったし、力ではかなわなかった。

翔二はリュックから、細い紐のような物を取り出して、グルグルと朔也の両手首をまとめて縛り上げていた。

汗が滲んでいる手首に、細くて白いビニールの紐が食い込んでいる。

それをみると、朔也は汗が全身にドッと吹き出てくるような気がしてきた。

「な……なにをするんだ……。ほどきなさい」

はじめて大きな声を上げたけれど。すぐに、翔二の笑い声にかき消された。

「あはは…。よく考えると、あんな男に執着することはなかったんだ。貴方のように、アイツに似た男は、いくらでもいる。

それを、嫉妬に駆られて殺しまでしてしまって…。俺はどうかしていた。

こうしてみていると、貴方でも充分だ」

甲高い笑い声がひびいているのに比例して、朔也は危機感を感じていた。

「ちょうど、アイツの家が引き上げてきた、いろいろなものがあるんですよ。ためしてみましょうか…」

「な……なにを……」

朔也が必死で逃れようと体を蠢かせても、両手首をしばられているし、むあっとした箱の中の熱気のせいで、思うように体を動かすことが出来なかった。翔二は手際よく、朔也のズボンのベルトを外して、下着と一緒に、それを足から引き抜いた。

「ひ……」

下半身を剥き出しにされて、朔也は恐ろしく、息をのんだ。「助けてくれ」とか悲鳴を上げたかったけれど、それだけの余裕が残っていなかった。喉の奥で、ちいさな悲鳴をあげるのが精一杯だった。

翔二は、ガサガサとリュックを漁って、チューブのようなものを取り出しているのが見えた。

「まずは、これを試してみましょう。あぁ、貴方の体は綺麗ですね。俺の恋人の体なんて、何度も何度も男に犯されているせいで、ケツの穴はユルユルで、どこを触っても快感に喘いでいて。縛って殴りつけても、快感でチンチンを勃起させていたんですよ。

 久しぶりに、こんな新鮮な体を見ます」

翔二の声はうわずっていて、微かに興奮しているようだった。

「ひ……」

朔也は、その言葉で、翔二の恋人が「男」だった、ということを悟った。同時に、ゾッとした。この男は、「同性愛者」なのだ。すると、当然に、自分にしていることも、「そういう行為」の強要だろうか…。

朔也は、逃げ出したくて、キョロキョロと目を動かしたけれど。箱は、少しも動きそうになかった。

「ひ……ひぃ……つ……冷たい……」

そうしている間にも、足の間に翔二の体が割り入ってきて、後孔に、そのチューブの先端が押し当てられた。そうして、ギュッとにぎられたせいで。

冷たい粘液が、後孔から侵入してきていた。

 

座薬を入れたときのような。奇妙な違和感が気持ち悪かった。

冷たい粘液が、どんどんと体内に入ってくる。座薬なんかよりもずっとその容量は大きくて。ただ、ゼリー状の粘液なせいで、グニャリグニャリと後孔の蠢きに形を合わせて変えながら。侵入してきていた。

 

「あ……う……きもち……気持ち悪い……」

どんどんと入ってくる。朔也はさきほどチラとみたチューブの中の粘液全てが入ってきて居るんじゃないだろうか…と感じた。

「あぁ、どんどん入っていきますよ。かわいいですね。ケツの穴がピンク色で。まるで、処女みたいだ」

朔也は処女を知らないので、自分の後孔がどんな風になっているのか想像が付かなかった。ただ、苦しい…というのと、あつい…というのに体が支配されていた。

「ひ……ひぃ……」

「ほら、全部入った。あぁ、ケツの中がグチャグチャだ」

「い……いた……う……」

翔二の指が、一本、はいってきて、ジェルで満たされている中若き回していた。

「大丈夫。痛いだけじゃないですよ。すぐに気持ちよくなりますから」

いったい、どれくらい、そうして翔二の指が、後孔を掻き回していただろうか…。奥からジンジンと熱いような感触がわき始めていた。

「う……うぅ……」

なんだか、もどかしくて、ジェルが染みこんで言っている粘膜が疼く。

「どうです? 痒いでしょう」

翔二の言葉で、朔也は、その感覚が「痒み」だと悟った。

「ひ……ひぃ……か……痒い…」

言葉にしてみると、余計にその「痒み」が増大していくように感じた。

後孔の奥から、ジワリジワリと痒みが迫ってきている。それは、強烈で、ただちょっと「痒い」という程度ではなく。むちゃくちゃに掻きむしりたい。血が出ても、ギリギリと掻きたい…と思うほどだった。

「あぁ……痒い……痒いよぅ……」

朔也は、自分の手で掻こうともしたけれど。両手首を縛られているし、後孔に翔二の指が入っているせいで、そうすることが出来なかった。

「あぁ、やっと効いてきましたね。強烈でしょう。あはは、顔が歪んでいる」

翔二の笑い声が、頭の中にワンワンと響いていた。とにかく、この痒みをどうにかしてほしかった。

「かゆ……あ…ひ……」

翔二の指が、そのヒクヒクと蠢いている後孔から、スッと引き抜かれた。

そうして、床の上に仰向けにされて、両足を大きくひろげて抱え上げられた。

さながら、乳児がオムツでも交換されるような姿勢にされて、朔也は「あぁ、下半身の全てが見られている…」という感覚に恥ずかしさが湧いて出てきていた。

ただ、それも一瞬で。触れてもいないのに、自分のペニスが勃起しているのが見えると、なんだか嘘のようだった。下半身だけが切り離されて、自分の体では無くなってしまったような心地がした。けれども、後孔の痒みだけは、脊髄をとおって、脳天まで直接的に響いているようだった。

「見てくださいよ。ほら。ケツの穴が、ヒクヒクしている。今にも、中になにか入れて欲しそうだ。パクパク口をあけて。金魚みたいですね」

「ひ……あ」

翔二がポケットから鏡をとりだして、わざと朔也に見えるように、股間の部分をうつした。

小さな鏡の中で、朔也の肛門は、赤く変色して、パクパクと口を閉じたり開けたりしていた。それは、息をすると、どうしても連動してパクパクと蠢いてしまう…。

「ひ……ひぃ……かゆ……」

ただ、鏡に映っている後孔が、自分のものだ…とおもうと、奥の痒みがどんどんと増してきているように感じた。

いままで、自分の肛門なんてみたことがない。あんなにも赤くて、パクパクと口を開いている物なのだろうか。

しかも、奥からいれられたジェルを滴らせて…。

「掻いてあげましょうか? だったら、「お願いします。僕の肛門の中を掻き回してください」ってお願いしてみてください」

翔二の声が耳元でささやかれていた。肛門の痒みが、ジワジワと体を支配していっている。このままでは、頭までもがおかしくなってしまいそうだった。

「あぁ……あぁ……おねがい…します……。

 僕の……僕の肛門の中を…掻き回してください……あぁ……」

自分の声だと信じたくなかったけれど。自分が、こんな卑猥な事をいって、また、興奮しているのが意外だった。ペニスの先端からは、先走りの液がにじみ出てきていて、キラキラと光っている。

「えぇ、じゃあ、掻き回してあげますよ。ほうら、気持ちが良いでしょう」

「あ……あ……」

指が二本入れられて、中がグチャグチャと掻き回された。濡れた音がしている。

でも、まだ、もっと奥が苦しかった。

「もっ……もっと……あぁ」

「あぁ、はずかしいですね。2本ではたりないですか? 本当だ。ケツの穴がヒクヒクとしていて、もっと欲しそうにしていますね。ピクピク蠢いていて。俺の指を締めつけてきている」

「ひ……うぅ……」

朔也は言葉に、先ほど鏡でみた自分の後孔を頭に思い出していた。あの赤い粘膜の中に、指が入っている。それで、掻き回されているのに。まだまだ、奥が辛い。

「ほら、3本にしましたよ。これでも、まだ物足りないですか?

「ひ……ひぃ……ひぃぃ……」

ぎっちりとキツイ感覚がしたけれど。ただ、奥がもどかしかった。

「あぁ……もっと……もっと奥……」

「残念ですね。指ではこれ以上奥まではとどかないですね。

 そうだ、俺のチンチンをいれてあげましょうか? 朔也さんのケツの穴の中に」

「え……」

チラと目をあげると、翔二がズボンの前をくつろげて、ペニスを取り出していた。

その赤黒い性器は、硬くなって、天をついていた。

朔也の口の中に、自然と唾液がたまって、ゴクリとそれを飲み込んだ。あんな大きなペニスが、自分の後孔に入るのだろうか…。

座薬を入れるときでも、痛いような。不快感をかんじるのに。ただ、奥の痒みがジリジリと増してきているのは確実で。そういう疑問なども、その痒みに押し流されていっているような気がしていた。

「あ……あぁ……か……痒い……」

「本当だ、パクパクとケツの穴が口を開けたり閉じたりして。エサに食いついている金魚みたいですね。中が真っ赤に充血している」

「ひ……あ……」

翔二のペニスの先端が、後孔の窄まりに擦りつけられると、どうしようもなくもどかしかった。

「あ……あぁ……い……入れて……痒い…かゆいよう」

朔也は自分が自分で無くなるような。籠絡されていく感覚を覚えた。自我というものが、土台から崩れていく。ただ、後孔の感覚にだけ、体全体が支配されている。

「い……いれ……て……ひぃ……」

「じゃあ、ご希望通り。入れてあげましょう。アンタのケツの中に、俺のチンチンを」

「ひ……」

体がさらに折り曲げられて、腹が圧迫されて苦しかった。

しかし、その苦しさも、ジワリジワリと後孔にペニスが入ってくる感覚に、散っていった。

「ひ……いた……あぁ……」

ビリとしたするどい痛みが走った。「う」と眉をしかめたけれど、そのあとに、ジワリジワリとペニスが侵入してくる快感に、それも紛れていった。

「あ……あぁ」

痒くて溜まらなかった後孔が満たされていく。ヒクヒクと後孔の入り口が蠢いて、翔二のペニスを、「もっと奥へ・もっと奥へ」と誘導している様子が、見えているように頭の中に浮かんでいた。

「ほら、ケツの穴がヒクヒクして、俺のチンチンをどんどんと飲み込んでいっている。すごく締めつけてきていますよ」

翔二の笑い声が聞こえると同時に、ピタリと翔二の動きが止まった。それは、まだ中途半端に、半分程度ペニスが入ったときだった。だから、奥がまだまだ満たされていなくて、朔也はもどかしくて腰を揺らした。

「ひ……もっ……もっと……」

「もっと奥まで突いて欲しいでしょう。ほら、ケツの穴ギュウギュウとチンチンにからみついていますよ。見てみたい? 自分のケツの穴が、どういう風にチンチンを締めつけているか」

翔二の事と同時に、翔二は再び鏡を取り出して、その結合部分を写した。恥ずかしくてたまらないので、見たくなかったけれど。でも、顔を背けるのが間に合わなかった。

「ひ……」

小さな鏡の中に、自分の後孔が翔二のペニスを締めつけている様子が映っていた。真っ赤に充血した粘膜が、赤黒いペニスにからまって、蠢いている。その奇妙な動きが、まるでイソギンチャクのようで。もしくは、何か、軟体動物の口みたいで。自分の体の一部だと信じられなかった。

自分の後孔が、あんな風にペニスを締めつけているだなんて…。

いままで、朔也はある程度は女性経験もあり、そういう陰部をみたこともあったけれど。

自分の後孔を、じっくりとみたことなんてなかった。しかも、ペニスをいれられて、ヒクヒクと蠢いている後孔なんて。

「あ……かゆ……痒い……」

ただ、その鏡の中の様子をみていると、奥の方から、更に痒みが増してきているような気がした。あの、中途半端に入れられているペニスが、もっと奥まで入ってきたら…。

「ひ……ひぃ……痒い……もっ。

 もっと奥……奥まで……」

「奥まで突っ込んで欲しいですか? じゃあ、希望通りに、奥まで突っ込んであげましょう」

「あ……あぁ」

次のページへ
HOME