白紙の大地
(1)

人を殺した。

名川春斗は大きく息をはいて、環状線の高架下のトンネルの中で立ち止まった。

そこで、いままで全速力で走ってきていたのだ…ということに初めて気付いた。

 

無我夢中だった。

何かに追われるような気がして、とにかく必死で走り続けていた。

だから、今、ここがどういう場所なのかも分からなかった。

ただ、頭の上を、電車が通っていく。その轟音だけが耳に響いていた。

 

ただ、街灯の微かな明かりが周囲を照らしていた。

名川春斗は立ち止まって、息を整えているに従って、自分の手が、血で濡れている事に気付いた。それに、包丁を握りしめたままだった。包丁の刃の部分にも、血がべったりと付いていた。それに、自分のシャツにも点々と返り血がついていた。

 

包丁を握りしめたまま。膝に手をついて、「はぁ・はぁ」と呼吸を整えていた。

そうすると、さっきまでの光景が頭の中に浮かんでくる。

 

なんてことない夫婦げんかだった。いつもだったら、春斗がおれて収まるような喧嘩だったけれど。今日の春斗の気持は、ささくれだっていた。それは、会社で営業成績がわるいので、降格と減給を言われたせいでもあった。また、自分は必死に努力をしているのに、そういう春斗に対して、妻が「あぁ、この役立たず。こんな男と結婚するんじゃなかった!!」などと罵詈雑言を浴びせかけてきた言葉に、ギリギリまではりつめていた神経がピシッと音をたてて裂けた気がした。

 

台所で料理をしながら小言を言っていた妻の背後から襲いかかり、その首をまず絞めてみた。妻は「ひ」といったけれど、すぐに大きな声で「人殺し!! 人殺し!! 」と叫んだ。だから、あわてて妻が手にしていた包丁をうばい、それで下腹部を刺してしまったのだ。

 

とっさのことで、「あ…」と思ったときには、もう妻の腹に包丁が突き刺さっていた。妻は「ひぃ」と悲鳴を上げたけれど、あわてて包丁を抜くと、ドバッと血が溢れた。妻は「ひ・ひ」と痙攣して、意識を失ったようだった。どんどんと広がっていく血だまり。

それに、ピクピクと痙攣をしていたけれど、しだいにその痙攣もゆるやかになって。

完全に停まってしまった。

春斗は包丁を握りしめたまま立ちあがって、ジッとその様子を見ているしかなかった。

 

血だまりの中で、ピクリとも動かなくなった妻をみて「死んでいる…」という事を実感した。そう思うと、「逃げなければいけない」という言葉が頭の中に浮かんできて。

ただががむしゃらに走り続けていた。

 

ひたすら、ひたすらに走って来たけれど。高架下にいると、その電車の行き交う轟音が、全てを消してくれるような気がしてきて、そこで立ち止まって、「はぁ・はぁ」と息を整えていた。

どうしようもないほどに、身体の奥から熱のようなものがわき起こってきているのを感じていた。俯いて、自分の血で濡れたシャツやズボンを見ていた。

血の赤色が鮮やかに浮かび上がっているように見えた。このうす暗い中で。その返り血を浴びた部分だけが、3Dのように浮いて見える。しばらく、包丁をもったまま俯いて、荒い息をしていた。そうしていると、不意に「あ」という声が聞こえた。

顔を上げてみると、そこには少年が立っていた。塾のリュックを背負って、春斗から2メートルばかり離れた場所で、足をとめてジッと春斗の方を見ているようだった。

春斗は、少年と目が合うと、とっさに「ヤバイ」と感じた。

 

まさか、こんな時間…12時を少し過ぎたときに、だれかが通るだなんて想像していなかった。春斗はとっさに、少年の方に駆け寄って、グイとその腕をつかんでいた。少年が何かを言ったけれど、頭上を電車が走ったせいで、その轟音にかき消されて、何をいったのか分からなかった。

 

ただ、春斗は、「きっと少年の目にも、自分の返り血をうけたTシャツ・それにズボンが鮮やかに目に映っているに違いない」そう感じたから。とっさの行動だった。

腕を引っ張ると、少年がアスファルトの上にうつ伏せに転げた。そのときに、黒いコンクリートの上に、白い髪の毛がパッと広がったように見えた。最初は金髪なのか…と思った。しかし、よくみてみると、それは金髪よりも、もっと白いように見えた。

春斗は、少年の身体を反転させて顔を見た。すると、色素の薄い瞳と目が合った。そこで、少年ははじめて「な……なに……」と声をあげた。

そのやや掠れた声。それに、焦点が合っていないような瞳。

春斗はなんとなく異様なものを見たような気がして、ジッと少年の顔に見とれていた。そうしているうちにも、高架の上を電車が何本も走っていく。そのたびに、少年の顔が影でくらくなったり。隙間から入る月明かりで白く照らされたりしていた。

どれくらい、そうしてジッと少年を見つめていただろうか…。

 

春斗は、少年の瞳と白い肌をみて「アルビノか…」と呟いた。

 

かつて、自分が大学生の時に「アルビノ」の同級生に出会ったことがある。「アルビノ」というのはうまれつき色素が少ないという障害だ。大抵は、あまり長生きをすることが出来ずに短命に終わってしまう。

その特徴として、瞳の色素も薄いので、弱視だったり。髪の毛も、当然に色素がないので真っ白だったりする。

初めて「アルビノ」の同級生を見たときには「そうか…そんな障害もあるのか」などと思ったけれど。

 

今、こうして身体の下に組み伏せている少年の瞳は、当時の、その同級生の瞳を連想させた。

「ひ……な……なに」

少年は何度も瞬いていた。きっと、春斗の顔もはっきりとは見えていないのだろう。だとしたら、さっき、少年が春斗の血に濡れた服を見て「あ」と言ったとおもったのは、思い違いであること…が実感させられてきた。

きっと、少年は「アルビノ」だから余程に顔を近づけなければ何も見えないに違いがない。ぼんやりと掠れたように見えているだけだろう。

 

だから、きっと「人が居た」ということにびっくりして、「あ」と言っただけに違いない…。

 

ただ、春斗はもう、こうして組み伏せて地面に押し倒してしまったから。引き返せない…と感じていた。

いまや、「少年が自分の返り血を浴びた姿をみているかどうか」よりも「こうして組み伏せてしまった」という事の方が大きくなってきていた。

 

「あぁ、畜生」

春斗は声をあげて、少年の白い肌と顔を見た。それは、黒いアスファルトと旨い具合に対比して、浮かび上がって輝いているように見えた。

「な……なに……なんなんですか……」

少年は声をあげて、両手足をバタバタとさせていた。しかし、所詮は子供の抵抗だ。春斗は、そうして少年を押さえ込んでいると、なんだか愉快な気がしてきた。

多分、小学四・五年生くらいだろう…。

 

自分はさっき1人殺してきたんだ。1人殺すも、2人殺すも、同じではないだろうか…。

それに、頭の中にはっきりと妻の横たわって死んでいる姿が浮かんでくると、奇妙に身体が興奮してきているのを感じた。

 

それは、身体の下の少年が奇形が故にわき起こってきた興奮かもしれなかった。

シャツから伸びる白い手足は、どこまで白いのか。見つめてみたい…と思わされた。

そう、ペニスも白いのだろうか…。この白い肌が赤くなることはないのだろうか…。

春斗は、バタバタと暴れている少年の目の前。それこそ、肌に付きそうなほどの近さに包丁を掲げた。

「ほら、大人しくしろよ」

「ひ……」

少年は、血に濡れた包丁に瞳の焦点を合わせて、掠れた悲鳴をあげた。

「ゆ……許して……あぁ……ひ」

少年はおびえたように身体をすくませて、ジタバタとした動きを止めた。そうして、ジッと身体を止めると、春斗の心の奥にむくむくと興味がわき起こってきているのを感じた。

「言うとおりにしていたら、何もしないよ。な、君もこんな場所で殺されたくはないだろう」

春斗は少年の耳に、やや大きめの声で囁いた。それは、「アルビノ」だから、聴覚も劣っているのかも知れない…と思ったせいだった。

「う……は……はい」

少年は、血で濡れた包丁が余程怖いのか、春斗の方を見上げて、ガクガクと頷いていた。

白い髪の毛が揺れる。

もっと、この「奇形」を見てみたい…。そんな強烈な欲望が身体の奥でわき起こってきていた。それは、「妻を殺してしまった」という現実感のない感覚と綯い交ぜになっていてた。

「だったら、そうだな…。とりあえずは、シャツとズボンを脱いでごらん」

「え……そ……そんな……」

少年は微かに首を振った。だから、春斗は、少年の右手のシャツをまくって、その腕腿の内側をスーッと包丁の刃で撫でてみた。

「ひ……ひ……」

赤い線がスーッと引かれて、そこから血が少しだけ滲み出してくる。

白い肌にくっきりと赤い線が浮かび上がった様子は、キレイだ…と春斗は見とれるような心地になった。

真っ白い肌に、赤い線がぷっくりと浮かび上がっり、その線はじわじわと太くなっていく。

「あ……い……いた」

少年は自分の腕を見、そこから血が滲み出しているのを確認すると身体をブルッと震わせた。

その痙攣するような動きが、余計に春斗を興奮させていた。

少年が何かを言ったけれど、それは頭上を走っていく電車の轟音にかき消されていた。身体がビリビリと震えそうなほどの轟音。それに、駅のアナウンスも高架下には響いている。それらの全てがまるで「異世界」にいるような心地にさせていた。その上に、身体の下に組み敷いているのは、アルビノの少年だ。まだ細い手足。それに、小さな身体。

自分は夢を見て居るんじゃないのだろうか…。そんな気持も湧いて出てきていた。

 

「ほら、服を脱がないと、この包丁で、君の腹をついて、刺し殺してしまおうか…」

春斗が再び囁くと、少年は「う」と声を上げてから、背中に背負っていた塾のカバンを落とした。そうして、シャツのボタンを外し、ズボンも脱ぎさっていった。

黒いコンクリートの上に、真っ白い身体が横たわっていると、本当に神々しく輝いているように見えた。

春斗はゴクリと唾を飲み込んだ。少年の白いブリーフは包丁で切断をした。すると、少年の小さなペニスと双球が表れた。陰毛がほとんど生えていない。真っ白い身体の中央のペニスも、やや赤かったけれど。やはり白いような気がした。

「あ……」

少年はやや恥ずかしそうに身体を丸めて陰部を隠そう…としたので、春斗は少年の髪の毛をつかんだ。

「なぁ、君はオナニーはしたことがあるかい?

「え……」

髪の毛を強くつかんで、耳に唇が付きそうな程まで顔を近づけた。そうすると、少年の白い首筋。それに、襟足が見えて、春斗はゾクゾクと心が波打つような気分になった。

「自分で、自分のオチンチンをいじって、イッたことがあるのか? と聞いているんだよ」

「…………」

少年は、ジッと黙っていた。

それは、肯定なのか、否定なのか。表情からはうかがい知ることが出来なかった。しかし、「オナニー」という言葉は知っているらしく、顔がやや赤く染まって、春斗から顔を逸らすようにしていた。

「まぁ、いい。さぁ、ほら。オナニーをしてごらん。こうして、自分のオチンチンをもって、指で扱くんだよ」

春斗は、少年を三角座りにさせると、その手をつかんでペニスを強引に握らせた。

「ひ……ひ」

少年は何かを言おうとしていたけれど。やはり、電車の行き交う轟音でかき消されてしまっていた。

「言うとおりにしないと、また、傷がふえるだけだよ」

春斗が少年の胸に包丁の刃を当てると、少年はビクリと身体を振るわせてから、「う・う」と涙を目に滲ませて。

ペニスに指を絡めはじめた、最初はゆるゆると握っていたけれど。

「もっときつく握って、根本から指を動かして扱くんだよ。ほら、こういう風に」

春斗が一度少年の指ごと手をつかんで、激しくペニスをグイグイと擦り上げた。

「あ……ひ……ひぃ……」

少年は春斗の指の動きに悲鳴をあげて、喉をのけぞらせていた。しかし、手の中のペニスは確実に固くなっていっていて。それが、少年が快感を感じている証拠だ…と思うと、春斗の中に奇妙な達成感のようなものが芽生えていた。

 

「わかったか。こうして刺激するんだよ」

「あ……は……はい」

春斗の言葉に、少年は俯いてガクガクと頷いた。春斗は手を離して、立ちあがり、少年を見下ろした。

「あ……あぁ……」

少年が、春斗が下のと同じように、きつく自分のペニスを握っている。そうしていると、ジワリジワリとペニスが勃起し始めてきていた。春斗は白かったペニスが赤黒く染まっていくのを見ていると、少年の身体で、その部分だけが赤くうきあがっているように見えて。興味を引かれた。だから、床に膝をついて、そのペニスに顔を近づけて、じっくりと見つめてみた。少年の白い指が赤黒いペニスにからまっている。なんだか、その「特別に白い指」が芋虫や幼虫のように見えた。ペニスに、そういう軟体動物がからまっている…。そうしながらもペニスはどんどんと勃起していっている。じっくりと、そのペニスの皺の一本一本。それに、からまっている指の関節の皺までじっくりと見つめていた。だんだんと勃起してきたペニスの先端からは、じんわりと液が滲み出してきていた。

「あ……気持ちいいだろう」

春斗は少年のペニスに顔を近づけたまま、そう囁いた。少年は「ひ」とか「う」と言うだけで、何も言葉を紡ぐことが出来ないようだった。それは、少年が初めて「オナニー」をしているせいなのかも知れない。こういう快感を感じたことがないのかも知れない…。

そう思うと、自分が真っ白なキャンパスを汚していって居るようで。

奇妙な満足感を感じていた。

「あぁ、おちんちんの先っぽから精液が出てきているよ。気持が良さそうだね」

春斗はそう呟くと、口を大きく開けて、少年のペニスをぱっくりと口でくわえた。

それは、「青臭そうな少年のペニスが、どういう味がするのだろうか…」という興味本位だった。

 

自分は同性愛者だ…ということを自覚していたから、いままで成人男性のペニスだったら、何度もそうしてくわえたことがある。結婚をしてはいても、自分のそういう性的嗜好を止めることは出来なかった。だから、安い飲み屋などで人をあさり、そういう事をしたことは何度もあった。

 

でも、少年のペニスは味わったことがない。しかも、「アルビノ」の少年なのだ。何か、独特の…。柏餅の葉のような、青臭さがありそうな気がしていた。

口を大きく開けて、指ごと実際にくわえてみるとたしかに口の中に、未熟な臭みを感じた。しかし、それは、生えている雑草を噛むような。あまり旨くない青臭さだったけれど。それでも、舐めているうちにだんだんと、その独特の臭みが旨いように感じてきはじめた。

それに、ペニスがどんどんと硬くなっていっているような感じる。

「う……うぐ……」

春斗が喉奥までペニスを飲み込んだ瞬間。不意にペニスがブルッと震えて、口内に苦くてねばい液体が放出された。

「う……」

春斗はあまりに意外だったのと、その臭みで眉をしかめた。口の中にたまっている少年の精液が臭くてたまらなく。春斗は、口をペニスから外すと、少年の前髪を鷲づかみにして、強引に唇を合わせた。そうして、口の中にたまっていた精液を、少年の唇の中に舌でおしこむようにして挿入していった。

「ぐ……ぐぅ……うぐぅ……」

少年は、口の中に流れ込んでくる臭みとねばい感触に、ブルブルと身体を振るわせていたけれど。春斗はがっちりと髪の毛をつかんで顔を固定させ、口の中の精液の全てを少年の口腔内に流し入れた。

それでも、まだ口の中がねばいような気がするて。

春斗は不快で。何度も、少年の顔にタンを吐いた。少年は自分の口の中に入ってきた精液に、頬を窄ませたり、目を白黒とさせたりして「ぐぅぐぅ」と苦しそうに声をあげていた。けれども、春斗が、がっちりとその唇をおさえていたせいで吐き出すことも出来ずに。

少年はしばらく、なんとか吐き出そう…と口の中の精液と格闘しているようだったけれど。

「う・う」と呻きながら、ゴクリと喉を震わせて嚥下していった。

「あ……あぁ……」

それを確認してから、春斗は唇を押さえていた手を離した。

「どうだ? 自分の精液の味は? 飲むのは初めてか?

春斗がニヤニヤと笑いながらそう囁くと、少年はガクガクと何度も頷いた。

「う……うぅ……く…口の中が……」

少年が唇を開くと、その口腔内でまだ精液が糸をひいて歯にからまってテラテラと光っているのが見えるような気がした。

「うまかっただろう。「僕の精液は、とてもおいしかったです」って言ってごらん」

春斗は少年の歪んだ顔。それに、小刻みに震えている身体をなでて、そう耳元に囁いた。少年は戸惑うように春斗の方を見たけれど。その包丁を見つめ諦めたように息を吐いた。

「あ……あ……お……おいしかったです……ぼ……僕の精液は……おいしかった…です」

少年は、喉奥から声を絞り出しているようだった。

「そう、よく言えたね。おちんちんを舐められるのは気持がいいだろう。

 普段のオナニーとは違うだろう」

春斗がそう囁くと、少年は「お……オナニー…」と口の中で呟いていた。

「ほら、もう一度、手で擦ってごらん。今度は、自分だけでイッてみるかい?」

春斗は少年の両手を取って、ペニスを握らせた。

「ひ……そ……そんな…」

「ほうら、きちんと言うとおりにしないと…」

春斗は、少年の白い胸を、包丁の刃でスーッと撫でてみた。そうすると、ぷっくりと赤い血が浮かび上がって。両方の乳首をまるで赤い糸で繋いだようになった。

「ひ……ひぃ…」

少年はその痛みと、目の前の出来事にびっくりしたのか、身体を大きく痙攣させた。

そうして、「あ・あ」と言いながら、ペニスの先端から、シャアアアと勢いよく、黄色い尿を放出しはじめた。

「チッ……なんだ……」

春斗は、慌てて身体を離した。

それでも、少しだけ少年の尿がズボンの裾にかかってしまった。

「あ……あぁ……と……止まらない……」

少年は、ペニスをにぎったまま、尿を垂れ流していた。それは少年の下腹部にたまってから左右に分かれて身体の上を流れ落ち、地面に黄色い水たまりを作っていた。

春斗は立ちあがって、少し離れて少年を見下ろしていた。随分とながく、ペニスの先端から尿が出続けていたような気がする。それだけ膀胱にたまっていたのだろうか…。恐怖のせいで、堪えていた膀胱が緩んでしまったのかも知れない…。

最初は、立ちこめるアンモニア臭と、その黄色い尿に眉を寄せていたけれど。

ジッと見つめ続けていると、黄色い尿の上で横たわっている白い身体は、奇妙に引き立って見えた。

「あ……あぁ……」

少年が握ったままのペニスの先端から放出された尿が、ジワジワと勢いを失って、完全にストップした。

春斗はしばらく見つめていた。少年の荒い息が聞こえていた。それに、何本か頭上を電車が通り過ぎていっていた。そのたびに、少年の身体が一瞬影になる。しかし、電車が行ってしまうと、黄色い尿だまりの中の白い少年の身体が高架の隙間から入ってくる月明かりで、キラキラと光っているように見えた。

「恥ずかしいね……おもらしなんかして」

春斗は、しばらくして、そう声をかけた。少年は「あ・あ」と自分の現況がなかなか理解出来ていないようだったけれど。春斗の言葉に、はっとなったのか。青白かった頬が、うっすらと朱色に染まった。

「駄目じゃないか…。こんな場所でお漏らしなんかして……」

春斗は、立ったまま腰を曲げて、横たわっている少年の前髪をつかんだ。そうして、地面の上に、四つん這いの姿勢にさせた。

「ひ……ひぃ……」

少年は短い悲鳴をあげていたけれど。ちょうど顔のあたりに尿だまりがくるように四つん這いにさせると、ジッとだまって、何も言わなくなった。春斗はポケットからiPhoneを取り出した。

それは、その異様な光景をただ見過ごしてしまうのは勿体ない…そう感じたからだった。

「さぁ、自分が出したモノなんだから、キレイになめてごらん」

「え……あ……」

少年は、最初、春斗の言うことが理解できなかったようだけれど。春斗は四つん這いの少年の後頭部の髪の毛をつかんで、グリグリとその尿だまりに顔を押しつけた。

「ほら、キレイに舐めるんだよ。君が「お漏らし」をしたオシッコだろう」

「ひ……あ……」

「さぁ、「おもらしをしてごめんなさい」と言ってから、キレイに舐めてごらん…」

春斗は、心の奥が、踊るように愉快でたまらなくなってきている感じがした。この目の前の少年は、自分のオシッコを舐めようとしている。

いままで、自分にはそういう性癖はないように思っていたけれど。

人を蹂躙して、支配するというのは、こんなにも楽しい物なのか…。

iPhoneで撮影をしながら、少年の背を足で踏んでみた。

「ひ……いた……」

少年は、背中に感じる革靴の底の感触に悲鳴をあげたけれど。少しジッと考えるようにしてから、チラと春斗の包丁を見て。

「お……おもらし…をして……ご…ごめんなさい……」

そう呟いた。その声は涙混じりで、少年が「泣いている」ということに、春斗は初めて気付いた。しかし、その事も、春斗の征服欲を、より満たしただけだった。

 

春斗は、たったまま、少年がペロペロと尿だまりを舐めている姿を見ながら撮影していた。しかし、大きな尿だまりはいつまでたっても、なかなか減らないように感じた。

「ほら、そうして舐めるだけじゃなくて、唇をおしあてて、ズズズッと吸ってごらん」

「あ……あ……は……はい……」

少年は春斗に言われたとおり。地面に唇を押し当てて、大きく吸った。

今は、シンとしている高架下で、少年が尿をすする、ズズズッという音だけが響いている。何度か少年がそうしていると、みるみるうちに尿だまりが小さくなっていった。それでも、そこに尿があった名残として、コンクリートの色がかわっている部分が広がっている。

 

ガシャンガシャンガシャンという高架を走る電車の音で、少年に見とれていた春斗も、ハッと意識を取り戻し

たような心地になった。

「おしっこ、キレイに舐めたね。おいしかったかい?

春斗の問いに、少年は「う……う」と呻いていた。白い顔の至る所が尿と地面の土で汚れていて。先ほどまで白かった顔が嘘のように汚くなっていた。

それに、少年の背中に、くっきりと春斗の靴底の跡がついていた。そうして見ていると、自分が完全に少年をしはいしたような気になる。

「あはは……あははは………」

春斗は心の底から笑いがこみあげてきて、大きな声を上げて笑った。それは、高架を走る電車の音よりも大きいような気がした。

少年は四つん這いのまま、ジッと黙っている。

春斗は、少年の尻の方を両手でつかんで、きちんと膝の角度が90度になるように抱え上げた。そうして、その尻の割れ目に顔を近づけてみた。

「あぁ……臭いね。君のおしり、私を誘うような匂いを出している。匂うよ。

 女のよりも、濃厚な匂いだ…」

春斗は、鼻をより割れ目に押し当てるようにして、その匂いをかいだ。

「くさい……くさいよ……」

春斗が呟くと、少年は小さな声で「ご……ごめんなさい……」と呟いた。しかし、匂っているうちに、その匂いは、春斗を誘惑しようとしている匂いのようにも思えてきた。そう、尻の割れ目からプンプンと独特の青臭い匂いをだして、春斗を誘っている。

「あぁ、なんて下品な尻なんだ……」

春斗は少し顔を離すと、少年の尻たぶに包丁の先端をあてた。

そうして、左尻に「イン」という文字に包丁の先端を滑らせた。それから、右尻には「ラン」という文字を描いた。

「い……痛い……」

少年はそう呟いていたけれど。包丁の先端で、そう書いたせいでジワリジワリと血が滲んできている。

白い尻に、「インラン」という文字がくっきりと真っ赤に浮かび上がると、春斗は言いようのない達成感を感じた。

「ははは……ケツに「インラン」って書いたよ。ほら、見てごらん」

春斗はiPhoneで撮ったその尻の様子を、少年の目の前に付きだしてみた。

「ひ……」

少年は、iPhoneに目をすりつけるようにして、ジッとその画面を見ていた。それが、「アルビノ」特有の奇異な仕草で。春斗は少年の白い髪をみつめていた。

自分の尻に描かれた文字をその画面に見て、少年は掠れた悲鳴を上げたけれど。

春斗は、少年の顔が恐怖にくっきりと歪んだのをみると、自分の中でも「興奮」がわき上がってくるのを感じた。

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