白紙の大地
(2)

そうしてから、少年の腰をかかえて、「インラン」と書かれた尻たぶをみつめた。

血が流れて、「インラン」という文字が歪んできている。キレイな白い尻に、赤くて細い「糸滝」のような血が流れている。それが太股までながれていき、白い内ももにも、幾筋も血の「線」を描いていた。

文字が滲むように崩れていく様は、最初は勿体ないような心地で見ていたけれど。

そうして「血の糸滝」をみていると、その筋が描き出している無作為な筋が。また、キレイな芸術のように見えてきていた。それは、少年の肌が「アルビノ」独特の真っ白な腿のせいで、まるで真っ白くて新しいキャンパスに。絵の具を垂らしたようで。目に美しく焼き付いて見えた。

「あぁ……綺麗だよ……」

春斗は呟いて、少年の顔の前に置いていたiPhoneをつかんで、その太股に何筋も赤い線を描いている様子を撮影した。しかし、小さな画面の中では、その「生でみる輝き」は平坦なものに終わってしまう気がして。それが悔しかった。今、こうして高架の隙間からの光でキラキラと光っている血の「糸滝」のなんとキレイな事か……。

「あぁ……あぁ」

春斗は「インラン」と書かれた両方の尻たぶに手をついた。そうすると、掌にべったりと血がつく。先ほど殺した時について「乾いている妻の血」の上に、少年の真っ赤な血がキラキラとかがやいてついている様子は初めてみるキレイさだった。

「あぁ、キレイだよ。君のお尻にかかれた「インラン」という文字から、血がドクドクと溢れ続けている。君は「インラン」なんだね。だって、そう書いている」

春斗は少年の尻たぶを左右に割り広げてみた。少年は「ひ」とか「痛い」と言っていたけれど。どれも微かな声だったので、春斗の耳をかすった程度だった。

尻の双丘を押し広げると、その中に小さな肛門が見える。きっちりと窄まって、口を閉じている様子が、とてもストイックに見えた。

それに、尻の割れ目を更に広げてみると前の睾丸の付け根が見えていた。

そうして、しばらくジッと尻たぶを広げたままでいると、肛門が少年の高級に合わせてヒクヒクと動いているのが分かった。じっとみていると、それが、まるで「誘っている」かのような錯覚が起きてきていた。

「あぁ……小さなケツの穴だね。ヒクヒクしているよ」

「ひっ」

その部分を指でなぞると、少年が明らかに声をあげて、身体をビクンと震わせた。その反応が、新鮮だった。

春斗は、垂れている血を集めて、その肛門の入り口に練り付けてみた。血液が凝固しかける時の独特の粘りけでもって、少年の後孔を指で押し広げていく。

「ひ……ひ……やめ……痛い……」

少年の掠れた声が聞こえた。自分が、そうしているせいで、少年の声が泣き声のような声に変わっている…と思うと、何とも言えない充実感がわき起こってきていた。それに、そうして少年の肛門が春斗の指を締めつけている様子を見ていると。

春斗は、自分自身も、興奮してきているような感覚を感じ取ってきていた。ベルトをはずして、ズボンの前をくつろげると、そこからやや屹立したペニスが表れた。

春斗は、少年の肛門をみつめて、自分が興奮しているのがどこか不思議な気がしていた。それには、ほんの少し罪悪感も混じっていたけれど。

 

また、電車の轟音が頭の上を通過していったことで、その罪悪感がさぁっと波がひくように消えていった。

そう、少年の肛門は春斗のペニスを受け入れるがために、こうしてヒクヒクとしている。血を塗り込まれて真っ赤に痙攣している尻の孔は、まさしく「何かを欲している」ように見えていた。

「さぁ……入れて上げよう…」

春斗は数度、自分の手でペニスを擦ると、それは完全に勃起した。

自分の手が血でぬれていたせいで、ただでさえ赤黒いペニスが、キラキラと赤く光っている。それは、同じように赤く輝いている、少年の尻と、磁石のようにひっつくことを欲しているように見えた。

「あ…て…ひ」

だから、少年の尻を抱えなおして、「イン・ラン」と書かれた双丘を割りひろげ、その奥の肛門にペニスの先端を押し当てた。

「ひぃぃぃ……」

そうして、四つん這いの少年の後ろから、後背位でグッと腰をつよく押し進めた。しかし、その肛門はおもっていたよりもずっときつかった。

ヒクヒクと震えているから、簡単にペニスを飲み込んでいくだろうか…と考えていたけれど。意外にもそれは窮屈で。思い切り腰を進めないと、押し込むことが出来なかった。

しかし、そうして無理矢理に腰をすすめると、「ピリッピリッ」と一瞬に緩くなっていくような感覚がした。

「あ……あぁ……奥まで……奥まではいったね……」

「ひ……う……」

一旦、最奥までペニスを入れてから、身体を少し起こして少年と自分のペニスの結合部を見つめてみた。そうすると、それは赤い鮮血が幾筋も少年の太股を流れていて。結合部がはっきりと何カ所もで「裂けている」ことが分かった。

「あぁ……随分と血がでて、肛門が裂けている…」

そう口にすると、まるで少年の肛門が、自分のペニスにあわせて形を変えているようで。自分が少年の身体を変化させた…。そういう満足感がわき出てきていた。

「うぅ……い……いた……」

じっくりと「イン・ラン」とかかれた尻と、裂けた肛門を見つめてから、少年の後頭部の髪の毛をつかんで首をひねらせ、その顔を見つめてみた。

「ひ……ひぃ……」

そういう姿勢をすると、後孔内の別な部分がえぐられるのか。少年は短い悲鳴を何度もあげていた。春斗はペニスが後孔内のあちこちに擦れる感覚に、半分酔ったような心地になっていた。

少年の顔を見てみると、それは涙と、唇から垂れた唾液。それに、地面に顔を擦りつけているせいで、少しの泥で汚れている気がした。それに、先ほどまてその唇に少年の「尿」がついていたのかと思うと。唇が妙にキラキラとひかって、浮き上がっているように見えた。

「きたねーな……」

春斗はそう呟くと、少年の顔を元通りに地面に押しつけた。

「い……いた……ひぃ……」

そうしてから、両手で腰をつかんで、ゆっくりとペニスを引き出した。

「あ……ひ……」

少年の身体がビクビクと震える。それに、ペニスにからまりついて後孔の粘膜が出てくる。それは、血のせいもあって真っ赤で。どこからが「血」で、どこからが「粘膜」なのかよく分からなかった。ただ、その真っ赤な粘膜を指で引っ掻くようにしてみると、少年の身体がブルッと震えて、後孔がキュッとしまった。

「あ……あぁ……」

ペニスの根本がきつく締めつけられて。春斗も、掠れた声を上げた。

 

いままでに感じたことがない、きつい締めつけ。それに、注挿を開始しはじめると、ピリピリッと後孔が一瞬緩くなる感覚がして、どんどんと裂けていっているのだ…ということが分かった。

しかし、その、後孔が裂ける。その瞬間の独特の感覚に、より興奮が煽られている気がした。今まで、女とも、男とも性交をもったことがある。しかし、こんなにも小さな少年を犯すのは初めてだった。

あぁ、小さな肛門を犯すというのは、こんなにも快感なのか。

少年は、ピリッとした感触がするたびに「ひぃぃぃぃ」と声を上げていたけれど。

その声は、すでに掠れていたし。頭上を走る轟音とまじって。どれが悲鳴でどれが電車の音なのか。分からないような気がした。だから、より激しく。

本能のままに、少年の腰をつかんで、激しく奥を突き上げ続けた。

 

「ひぃ……ひぃぃぃ………」

「う……あぁ……」

快感に、頭の中がぼんやりとしてきていた。きつく、ペニスにからみつく独特の感覚が。いままでに味わったことが無く、たまらない快感だった。

「あ……あぁ……い……イク……」

春斗は、少年の腰を一際引き寄せて、その尻の奥に。精液を放出した。

「あ……あぁ……あぁぁ……」

目の前がチカチカと点滅していたけれど。頭の中には、先ほどまで見ていた少年の真っ赤な後孔の奥深くに、自分の精液が打ち付けられている様子が浮かんできていた。

きっと、あの真っ赤にうごめいている中に。ドクンドクンと自分の精液が吸収されていっている。

「あ……あぁ……あ……」

自分がおもっていたよりも、ずっと長く。精液が放出され続けているのを感じた。

それは、終わりがないようにも思ったけれど。

「う……うぅぅ……」

腰のあたりが、ジワリジワリと軽くなっていって。「あぁ、全ての精液がでていった……」と感じた。

しかし、全部を放出してからも、しばらくは少年の腰を引きつけたまま。ジッとしていた。それは、少年の中の粘膜に自分の精液が吸収されるのを待つような心地でもあったし。また、自分の視界も、強烈な快感のせいで、しばらくは歪んだり点滅したのして。瞬きをするたびに、視界が定まらず変化しているせいでもあった。

ただ、しばらくそうしていると、だんだんと自分の意識もはっきりとしてきて。視界も明瞭になってきた。それが、どくらいの時間だったのか分からない。ただ、電車が頭上を走っていく音を何本かやり過ごした後のような気がした。

「あ……あぁ……」

春斗も、ここまでの快感を感じるのは、初めてな事のきがしていた。だから、慎重に…。

少年の後孔からペニスを引き出した。ズルリ…と濡れた音をたてて引き出されたペニスは、精液と血でテラテラと光っていた。それに、少年の後孔も。

あちこちの襞がさけて、ダラダラと血を垂れ流していた。

「あぁ、かわいそうに…。随分と裂けて、切れてしまったみたいだね」

「ひ…」

春斗が指をだして、少しその襞をなぞると、少年は身体をビクンと震わせた。

「ほら、みてごらん。君のおしりの穴の中にいれていたから、こんなにも汚くなってしまったよ……。君のせいだよ」

春斗は、少年の後頭部の髪の毛をつかんで身体を回転させた。春斗は、地面に腰を落として、足を広げて座った。少年の髪の毛をつかんで、ちょうど自分の股間に少年の顔が来るようにした。

「う……うぅ」

少年の頬に、ペニスをなすりつけると少年は苦しそうにうめき声をあげたけれど。

「ほら、これくらい近づけないと、見えないだろう。ね、見えているかい? 僕のおちんちんが、君の血とお尻の穴のせいで、こんなにもよごれていることが」

少年の目に、ペニスの先端を押しつけるようにすりつけた。

「ひ……ひぃぃ……」

少年は、眼球にペニスが擦りつけられる…とおもったのだろう。激しく痙攣して、春斗の股間から顔を離そうとした。しかし、がっちりとその顔を手でつかんでひきよせているせいで、それもかなわない。

春斗には、少年の身体がしっとりと汗で濡れていること。それに、その身体の全体に、赤い血がついていること。それらのせいで、自分が異世界に迷い込んだような気分になっていた。

「さぁ、なめてキレイにしてごらん…」

春斗は少年の唇をこじあけて、その小さな口の中に、屹立したペニスを押し込んだ。

「あ……あぐぅぅぅ……」

少年は掠れた悲鳴をあげながら、ペニスを飲み込んでいっている。

口が小さいせいで、少年の喉奥にまですぐにペニスが到達する。少年が息をするたびに、喉奥ののどちんこが震えるるのがペニスの先端につたわって、心地よかった。

春斗は、少年を四つん這いで腰を高く掲げるような姿勢にしせたまま、片方の手を伸ばして、少年のペニスを握ってみた。

それは、先ほどまでの痛みと、今の口にペニスをくわえている苦しみのせいで、すっかり萎えていたけれど。

指でつかんで、グイグイと何度もつよく握って刺激した。それに、双球のほうからも搾り取るように指を動かすと。

「う……う」

少年はうめき声をあげていたけれど、春斗の手の中で、はっきりとペニスが勃起しはじめてきていた。

「おちんちんを舐めて、勃起しているなんて、ヘンタイだね」

まだ少年で若いせいか、さきほどイッたばかなのに、少年のペニスは春斗の手の中でどんどんと固くなってきていた。それを感じていると。

春斗も、また下半身にどんどんと精液がたまっていって、ズシリと重たいような気がする。

「あぁ。君の口の中。気持がいいよ…」

春斗は少年の髪の毛をつかんで、激しく揺さぶりはじめた。

時折、ペニスに歯があたる。それがビリとした痛みに感じるけれど。それもまた、斬新な刺激のようで、より興奮を助長させていっていた。

「あ……あぁ……」

春斗は片手で少年のペニスを握りながら、グイグイと頭を自分のペニスに擦りつけた。

手の中のペニスも完全に勃起している。少年の白い肌が、うっすらと赤くなっているように感じた。ペニスをくわえている少年の前髪をつかんで、その表情をみた瞬間。身体にピリッと電気が走ったような気がして。

「あ……イク……」

その眉をよせて、目は白目を剥き唇の端から唾液を垂れ流している歪んだ表情を見ると。春斗の背中を快感が駆け上がっていって、ペニスの先端から精液が放出される解放感が身体に満ちてきていた。

「あ……あぁ……」

先ほどよりは、やや量が少ないような気がしたけれど。ドクンドクンとペニスの先端から精液が放出されるのを感じた。

少年が「う」と苦しそうに眉を寄せている。だから、ひときわ少年の喉奥までペニスを押し入れ、その食道の中に精液を流し込んだ。

「う……うぐ」

少年が苦しそうに顔をゆがめながらも、喉が動いて、ゴクンゴクンと精液を嚥下していっているのがみていてよく分かる。

「あ……あぁ……」

いいようのない満足感に満たされている気がしていた。少年の白い喉が何度も動いたのを確認してから、ズチュリと音をたてて、少年の口からペニスを引きずり出した。

それは、精液を放出し終えて萎えていたけれど。精液と唾液に濡れて、光っていた。だから、それを、近くに放っていた少年のシャツでグイとぬぐい、ズボンの中におさめた。

「あ……う……」

少年は、口の中が気持ち悪いのか、何度か口を開けたり閉じたりを繰りかえしていた。

「どうだい? 精液はおいしかっただろう」

春斗は、少年の髪の毛をつかんで、顔を覗き込んだ。

「う……」

少年が首を振ろうとしたので、地面に置いていた包丁を取り上げた。

そうして、少年の目に見えようにかかげると、「ひ」と少年が息をのんだのが分かった。

「おいしかっただろう」

もう一度聞くと、少年は包丁をまじまじと見てから、ゆっくりと頷いた。

「お……おいしかったです……」

その顔は恐怖が色濃く映っていて、春斗を愉快な気分にさせていた。

春斗は少年の髪の毛をつかむと、四つん這いになっていた身体を起こして、三角座りのような姿勢にさせた。そうしてから、両方の足を大きく開かせた。

そうすると、股間のペニスがはっきりと見える。

春斗は、少年の背後から、そのペニスをつかんでみた。

包丁を見た恐怖のせいもあって、さっきまでは勃起していたのに、今は萎えてしまっている。そのしぼんでいるペニスを、春斗はグイとにぎって、何度か刺激した。

「あ……あ」

少年が、恥ずかしそうに足を閉じようとする、春斗は、その膝をつかんで、より大きく足を開かせた。

「さぁ、じゃあ、オナニーをしてごらん。ほら、こうして、自分の指で、おちんちんを弄るんだよ。できるだろう」

春斗は少年の両手をつかんで、その手ごとペニスをグイグイと刺激した。そうすると、少年は喉を反らして「あ・あ」と掠れた声を上げた。

何度か少年の手ごしにペニスを扱いてから、春斗は手を離して、少年の真正面に膝立ちで座った。そうして、iPhoneの画面を、少年の方に向けた。

「あ……あぁ」

春斗が手を離すと、少年は手の動きを止めたけれど。ペニスは半勃ちになっている。

「さぁ、自分の手で、ペニスをしごいてごらん。さっきみたいに、両手でもって、根本から先端に動かすんだよ」

そう低い声で囁くと、少年はやや躊躇してから、ペニスを握っている指を動かしはじめた。

それは、春斗が先ほどまでしごいていた動作とまったく同じで。少年の指の中で、ペニスがどんどんと勃起してきていた。そうなると、少年も本能的に指が勝手にうごいてしまうのか。その屹立して赤黒くなったペニスに絡みついている指の動きも、どんどんと早くなって行っていた。

春斗はiPhoneの液晶と、少年の生の姿とを交互に見ながら、その真っ白い身体の中心に赤黒いペニスがあるのが、奇妙な光景のように見えて、ゴクリと唾を飲み込んだ。

少年が「あ・あ」と悲鳴を上げている。

それは、絶頂が近いことを示しているようだった。

「そう。もっと激しく指を動かして。指をわっかにして、根本から早く擦るんだよ」

「あ……あぁ……なに……うぅ」

少年は春斗に言われたとおりにしながら、ビクビクと身体を痙攣させていた。

ペニスの先端から液が滲み出してきはじめている。

イクに違いない。もう、絶頂が近いだろう…。

春斗はそう察すると、じっとそのペニスをみつめた。指の動きにあわせて、震えている。

「あ……うぅ……い……イク……」

少年がそう悲鳴のような声を上げると同時に。小さなペニスの先端から、ピュッビュッと精液が溢れた。その量は少ないようだったけれど。だけれども、春斗は、少年が絶頂を迎えて、身体を痙攣させて快感に顔をゆがめた様子に、奇妙な満足感を感じていた。

「オナニーは気持ちよかっただろう」

春斗がそう言っても、少年は「あ・あ」と快感の名残でビクンビクンと身体を震わせているだけで、意識がどこかに飛んで呆然としているようだった。だから、春斗は少年の髪の毛をつかんで、何度かその頬をペチペチと叩いた。

「気持ちが良かっただろう。ほら、言ってごらん「オナニーは気持ちよかったです」って」

春斗は、少年の耳に囁いた。少年は足を広げた三角座りのまま、ぼうっとしていたけれど。

「ほら、早く言えよ」

春斗が軽く包丁でペニスをつつくと、「ひ」と悲鳴をあげて、身体を震わせ、あわてて足を閉じた。白い太股で、ペニスが見えなくなる。

「あ……あ…お……オナニーはきもち…よかったです……」

春斗は少年の言葉に、口角をあげて笑んでから、少年の髪の毛をつかんで、床にうつ伏せに寝かせた。そうして、真っ白い背中に包丁の先端をあてて、「オナニースキ」と包丁を滑らせて、文字をかいた。血が浮き上がってきて、その文字が赤色になっていく。

「あはははは。「オナニースキ」だってよ。このヘンタイ!!

春斗は少年の背を足を踏み付けて、何度か蹴った。少年はそのたびに「う・うぐ」と悲鳴をあげていた。春斗はその様子もiPhoneで撮影しながら。このまま少年の心臓をついて、殺してしまおうか…とも思った。

ただ、しかし、少年の顔をみると、その色素の薄い瞳。それに、真っ白の髪の毛。透きとおるように白い肌をみていると、その少年を殺してしまうのは、勿体ないように感じた。

それは、少年が「アルビノ」故かもしれない。普通の少年だったらば、どこにでも居るけれど。「アルビノ」という特別変異の少年は、この少年だけかも知れない…。

「…………」

しばらくそうして、少年の色素の薄い瞳をみていると、これっきり。少年を離してしまうのがもったいないような気がしてきた。

 

もっと…。もっと堪能できないだろうか。

春斗は、そこら辺に放っていた少年のカバンを引き寄せて、その中身を地面の上にひっくり返した。そうして、ノートや筆記用具・財布などがパラパラに散らばった中から、携帯を取り上げて、その画面を操作し、電話番号を表示させて自分のiPhoneに登録した。それに、少年の財布を漁って、身元を表すようなものを探した。ちょうど塾の会員証が入っていたので、そのカードをiPhoneで撮影した。その時にはじめて、春斗は少年の名が「朝月

 新」である、と知った。それに、意外に住所が近所なのも分かった。

 

春斗は、それらの行為を終えると、立ちあがった。

そうして見下ろすと、うつ伏せで荒い息を吐いている少年の背中には「オナニースキ」。尻には「インラン」という文字が赤く浮かび上がっている。血が垂れてきているせいで、文字はまるで半紙に滲んだようになっていたけれど。

しかし、うす暗い高架下で、隙間からの月明かりに照らされている少年を見ていると、なんだか現実感が薄れてきていた。

ジッとみていると、不意に、ガシャンガシャンという音がして、高架の上を電車が走っていった。その轟音に、一瞬にして春斗は「ハッ」と現実に意識が引き戻された。

自分の身体を見下ろしてみると、Tシャツにもズボンにも血がついている。それは、妻を差したときの返り血なのか。傷付けた少年の肌にふれていたせいの、少年の血なのか分からなかった。

ただ、電車の轟音を聞いていると、いままでの事が全部幻で、自分の意識が現実に戻っていくような気がした。

「………」

「う……う」

呻いて、横たわっている少年をチラとみてから、春斗は包丁をにぎったまま、ゆらゆらと来た道を引き替えしていった。

住宅地だから、うす暗い。誰も、通る人はいなくて、ただぺたんぺたんと黒いアスファルトの上を交互に足を動かして、自宅の方へと戻って行っていた。

途中、橋にさしかかったところで、自分が握りしめている包丁が、妙に目立つような気がして、その川に放り投げて、捨てた。

ぽちゃんという音がして、包丁が川の中に沈んでいく。その様子が瞼の裏に浮かぶようだった。

走ってきたときには、とても近くに感じたけれど。こうして1人、冷静に歩いていくと、思っていたよりも自宅は遠かった。

 

春斗は、自宅のドアの前にようやくたどり着いて、ゴクンと唾を飲み込んだ。

この中で、妻が死んでいるに違いがない。自分の服にうけた返り血を見下ろしてから、ドアのノブをつかんでその扉を引き開けた。そのときにはじめて、自分の手が震えていることに気付いた。

自宅はシンとしていて、暗かった。しかし、なんとなく自分がでていったときとは違うような空気が流れているように感じた。その微かな違和感を感じながらも、春斗はクローゼットに行き、血で汚れたシャツとズボンを脱いで、新しいシャツとズボンに履き替えた。それは、死んでいる妻を見に行くのを、すこしでも遅らせたい…と思うが故の行動だった。自分の犯してしまった罪を認めたくないから。

しかし、心のどこかで、妻の事が気になって気になってしまっているのも事実だった。

だから、着替えを終えたらゆっくりと階段を下りて、妻の遺体が転がっているはずの、キッチンへと向かった。

「あ……」

しかし、意外にも、そこには妻の姿はなかった。

ただ、血だまりが広がっているだけで。

春斗は、ザワザワと気持が焦ってきているのを感じた。

どうしたことだろう…。たしかに、たしかにそこで妻は死んでいたはずなのだ…。

どれくらい、呆然としていただろうか…。

 

じいっと立ちつくしていると、不意に玄関のドアが開く音が聞こえた。

春斗は足がその場所につなぎ止められているようで。動くことが出来なかった。だから、そうして立ちつくしていると、不意に後から肩を叩かれた。振り返ってみると、そこには随分と大勢の人がいた。

「名川春斗さんですか? 私たちは警察のものです。

奥さんが強盗に襲われたらしいので、A病院に運ばれています。

幸いにも、命に別状はありません。捜査と、現場保全のために、立ち入りをしばらく禁止させていただきます」

「え……」

春斗が呆然としている間に、たくさんの男があがってきて、黄色いテープで台所をかこっていた。

「驚かれているでしょう。すぐに、A病院に向かった方が良いです。奥様は、意識もはっきりとしています。ご主人さんが、「きっと、帰ってきたらビックリするに違いない」ととても心配されていました。すぐに、A病院に行って下さい。

 それから、また、捜査のために、すこしお話を聞くかも知れません」

春斗は、警察官の行っている言葉を、半分上の空で聞いていた。

しぱらく、警察官が忙しそうに動き回っているのをみているうちに、だんだんと現状が飲み込まれてきた。

妻は、死んでいなかったのだ…。

仮死状態だったのかもしれない。そうして、春斗が妻を刺した、という事をだまって、「強盗におそわれた」として通報し、病院に運ばれていったのだろう。

 

春斗は自分が居ない間の妻の行動を考えると、自然と涙が出てきていた。

それは、妻の、自分に対する恩情に感謝したせいかもしれない。もしくは、「殺人罪」というものから逃れることがで来た安心感のせいかもしれない。

警察官は、春斗が泣いているのは動揺のせいだろう…とおもったのだろう。チラリとみてから、淡々と動いて、その血だまりの周囲にあつまり、何か調べているようだった。

 

春斗は二階のクローゼットにあがって、血のついたシャツとズボンを紙袋にいれて階下に降り、そのまま車庫に向かって自動車に乗った。

A病院に向かう途中のコンビニのゴミ箱に、その紙袋を押し込んで捨てた。

そうして、妻のまっているであろうA病院へと向かって行っていた。

 

ただ、春斗の頭の中では、こんやあったことが、いろいろと鮮やかによみがえってきていて、どこか雲の上を歩いているような心地だった。

血の色。真っ赤な血の色だけが、頭の中に広がっている。

春斗は、無言で、A病院へと車を走らせていった。

 

 

 

白紙の大地 2014 02 07 UP
金髪美少年の受が読みたい、とのリクエストをいただいたのですが、私はあまり外国人の受っていうのは思いつかなくて…。舞台が外国だったら。外国人同士だったらけっこういいかも…とかとは思ったのですが…。
それで、そうだ…。いつか書きたいとおもっていた「アルビノ」な少年を受にすることにしよう…と思い、書きました。障害をネタにするような形になってしまってすみません。
小説故の幻想世界でのことですので…。どうかご容赦下さい。

よろしければ感想などいただけると嬉しいです。

前のページへ
HOME
小説の目次へ