さようならのくに 壱 2ページ目 |
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修は、敬偉の顔の、涙の跡を舐めてみた。しょっぱい味が、口の中にひろがった。 敬偉は、身体をビクンビクンと震わせながら、よどんだ瞳で虚空をみつめていた。 その頭の中では、何をかんがえていたのか分からない。 ただ、後孔の掻痒感に支配されていることだけは確かだった。 「う……うぅぅ……お…おちんちん…を……いれて下さい…」 敬偉は、修の言葉をなぞるように、繰りかえした。唇の間からチロチロとみえている赤い舌が、艶めかしかった。 その赤い舌は、後孔の赤くなっている襞と、その奥の粘膜を連想させた。 「じゃあ、入れてあげよう。嬉しいだろう」 「う……う……嬉しい……あぁ……かゆ……」 一瞬、3本の指を引き抜いた。 中の粘膜が、べったりとまとわりついて、引きで出来そうな感触がした。修は、その感覚に、満足げに笑みをもらした。 そうしてから、双丘を思い切り左右に割り広げて、後孔の窄まりに、自分の屹立したペニスを押し当てた。 「ひぃ……ひぃぃ……あぁ……」 ジワリジワリと腰をつかんで、後孔の中に、ペニスを押し込んでいく。 さっきまで広げられていたので、後孔の粘膜は、じっとりと絡みつくようにして、ペニスを受け入れていっていた。その、独特の感触が、修には心地よかった。 ここ久しく感じていない感覚のように思えた。 それに、相性というのもある。 中には、挿入しても、たいして快感を感じない者もいる。それに、すぐに裂けて、痛みで悲鳴をあげられて、とても快感に集中できない者も。 その点で、修は、敬偉と自分の相性は抜群な気がした。 こんな快感を感じるのは、初めて性交を持って以来のような気もした。 「あぁ……気持ちいいよ…君の中……」 修はうっとりと呟きながら、ジワリジワリと腰を進めていった。 「あ……うぅ……はいる……入ってくるぅ……」 敬偉は、喉をそらせて、胸を突き出すようにしていた。 だから、胸の乳首が目について、舌でなめて、歯をたてて噛みついてみた。 「ひぃ……」 敬偉の身体がはるて、ギュッと後孔の締まりがきつくなった。 修は、ペニスが絞り上げられるような感覚に、より、快感が押し寄せてくるのを感じ、執拗に。 何度も乳首をなめて、歯で甘噛みし、唇をおしあてて吸った。 「う……うぅぅ……へん……あぁ…」 乳首が、だんだんと硬くなって、ぷっくらとたっていく。両方の乳首を、交代交替に刺激した。 両方の乳首が、修の唾液をまとって、ふっくらとたちあがっていた。 ピンク色が濃くなっているような気がする。 「あ……あぁ……かゆ……」 修が、ジッとペニスを購入したままで乳首をいじっていると、敬偉の方から、腰をゆらゆらとゆらしはじめてきた。 その仕草がつたなくて、修は、なんだか愛おしさがこみ上げてきた。 「そんなにもお尻が痒いかい? じゃあ、ほら、擦って上げよう」 「あぁ……う……」 敬偉の腰をつかんで、激しく注挿をはじめた。 「ひ……ひぃぃ……」 敬偉は声をあげて、身体を痙攣するように震わせていた。 「あ……あぁ……」 「気持ちいいだろう」 修がささやくと、敬偉は喘ぎ声まじりに、首をガクガクと縦にゆらした。 「あ…う…きもち……気持ちイイ……」 修は、縛り上げた敬偉のペニスに指を絡ませて、ギュッとにぎって刺激した。 「ひぃ……あぁ……」 前後の刺激で、敬偉の顔からは、理性が綺麗に吹き飛んだようだった。 「あぁ……気持ち…イイ……イイよぅ……あぁ……」 ペニスを扱くと、後孔もギュッと締まってくる。中の粘膜が絡みつく感覚と、ペニスの根本が縛り上げられるような刺激に。 修も、快感が体中に充満していくのが分かった。 特に、後孔の中の蠢きは、別な生き物のようで。 本当に、この蠢いていて、ギュウギュウと絞り上げているのは、後孔なのだろうか…と結合部分を何度も覗き込んだほどだった。 それだけ、「身体が合っている」と感じた。 敬偉も、修の舌で、白い太腿を何度も痙攣させていた。 通じようではない、ビクビクと、弾けるような動きは、目に新しく、快感を増幅させる。 「あぁ……イイよ……イク……」 修は、敬偉の腰を引き寄せて、最奥までペニスを挿入した。 「ひぃ……」 その刺激に、敬偉の奥がビクビクと痙攣して。修のペニスを絞り上げた。それに誘導されるがままに。 修は、敬偉の中に、精液を放出した。 「あ……あぁ……イク……きもちいいよ……」 自然と、口から言葉が漏れていた。 「あ……う……イク……あぁぁ……」 後孔の奥に、あつく注ぎ込まれる感触に、敬偉の身体も、絶頂を迎えたときのように、激しく揺れた。 ただし、揺れただけで、そのペニスからは精液は放出されなかった。 「う……な……なんで……あぁ……」 ペニスから出るもの、とおもっていた快感が、グルグルと身体の中をまわって、放出されないのがもどかしいのだろう。 敬偉は身体を床の上で跳ねさせた。 修は、腰を引き寄せて、全てを注ぎ込んでから。ゆっくりと敬偉の腰を離して、自分のペニスを彼の後孔からズルリと引き出した。 ペニスは軟膏と、修が放出した精液とで、じっとりと濡れていた。 「あ……う……くるし……あぁ……」 修は、ペニスを簡単に拭って、身繕いを整えてから、まだ股間を大きく開けて、縛らせたペニスと、ヒクヒクと蠢いている後孔を剥き出しにしている敬偉に向き直った。 「気持ちよかったよ。君の中……」 「ひ……あぁ……」 修は、うっとりと呟くようにいいながら、ゴムの食い込んだ敬偉のペニスを握った。 それは完全に勃起していたけれど、根本でしばりあげられているせいで、精液を放出できない状態でいた。 修は、赤黒いペニスを、じっくりと観察してみた。 敬偉の身体相応のペニスで、屹立しているので、裏筋がはっきりと見えている。 よくよくみていると、血管の浮かび上がっているのまで見えそうな気がした。 「あ……あ…そんなに……見ないで……」 じっくりと観察されて、恥ずかしそうに、腰をもじもじと動かしていた。 ただ、その言葉とは裏腹に、敬偉の顔は赤くなっていて、興奮しているのがよく分かった。 「う……う……ソレ……はずして…苦しい……」 ペニスの根本で結わえているゴムの事だろう。 「でも、まだ、中がかゆいんじゃないのかい? 」 修は、からかうようにささやくと、後孔の入り口を指でつついた。 「う……」 ソレは、イソギンチャクでもつついたように、キュッとすぼまり、何かを飲み込もうとした。 「あ……あ……かゆ……」 それで、掻痒感が戻ってきたのか。 敬偉は身体をビクビクと震わせた。 「痒いだろう。何か、入れて欲しいだろう。それで、中を掻き回して欲しいんじゃないのかい? 」 修の言葉に、敬偉はためらい勝ちに、微かにうなずいた。 理性よりも、本能が勝った瞬間だった。 修はニタリと笑って、薬箱の中から、毒々しい緑色の異物を取り出した。 それは、男性器を模していたけれど、随分と大きくて、周囲にイボイボが付いていた。 「じゃあ、コレをいれてあげるよ」 敬偉に見えるように。修は、それを掲げた。 敬偉の目はとろけるように淀んでいたけれど。それを見た瞬間。黒目がくっきりとして、「ひ」と喉の奥で声を漏らした。 「む……無理……無理……」 その大きさに怖じ気づいたらしい。 「大丈夫だよ。そうだね。ちょっとは裂けてしまうかも知れないけれど……」 「ひぃぃ……」 敬偉は、逃げようとするように、身体を動かせた。でも、首をベッドの足にしばられて、身体の間に修を挟み込んだ状態では、ほんの2・3センチメートル上にずり上がっただけだった。 その様子が滑稽で、修は「はは」と声にだして笑った。それが、余計に敬偉には恐ろしく感じたらしい。 「む……無理…無理……」 「じゃあ、入れてあげるよ……さぁ……」 修は、ゆっくりと。後孔の入り口に、その異物を押し当てた。 先端がなめらかな三角すいのようになっていて、本物の男性器を模したように、少しふくらんでから、太い棒のようなものがついている。 その、棒状の部分が太く、大きなイボイボがたくさん付いていた。 そうして、根本から先。後孔から出ている部分は四角く、握ることが出来るようになって、スイッチがついていた。 「うぐ……うぅぅぅ……」 敬偉は息を詰めて、巨大な異物に耐えていた。 ジッとみつめていると、後孔の襞も、限界まで広がっているようだった。 「ほうら、はいっていく……」 修は、歌うように、はずみをつけた声をだした。 グチュグチュと。バイブが入っていくにしたがって、その後孔とバイブの隙間の粘膜から、泡だった粘液があふれ出てくる。 それは、先ほど修が中にだした精液と、先にいれていた軟膏があわさって、泡立っているものだった。 「あぁ……いた……あ…あ…」 敬偉が声を甲高く上げた瞬間。 太い竿部分をいれていた後孔の襞が、「ピッ」という感触がして、裂けた。 そこから、じわじわと赤い鮮血がしみ出して。 ぷっくらと膨れあがった。 「あぁ……さけてしまったね……。でも、すこしだけだから」 「ひ……いた……あぁ……」 敬偉は、息をつめて、その痛みに堪えていた。 その表情のゆがみも。「綺麗だ」と修は思った。 汗と涙で髪の毛が貼り付いているけれど。そうして、昂揚している様子でさえも、また、修は興奮してくるような気がした。 「さぁ、全部入った」 ほんの少し裂けただけで、バイブは根本まで、敬偉の中に入っていった。 「ひ……うぅ……くるし……」 敬偉の言葉とは裏腹に、そのペニスはぎっちりとゴムを結わえられて、屹立していた。 「さぁ、スイッチを入れるよ」 修は、バイブの根本にある、スイッチを入れてみた。 まずは、「弱」にしてみたが。 「ひぃ……あぁぁ……うぐ……うぅぅ……」 激しく敬偉の身体が跳ねて、下半身が修の腰にこすりつけられた。 「あ……あ……だめ……うぅ……」 ペニスはすっかり勃起して、それを、修の腹あたりにすりつけようとしている。 その仕草に、笑みが漏れた。 「弱」でこんな様子だったら、「強」にしたらどうなるだろうか…。 修は好奇心に任せて、スイッチを「強」に入れ替えてみた。 「ひぐ……ぐぅぅ……」 同時に、敬偉の身体が大きく震えて、噛みしめた唇から血が流れ出てきた。 それに、後孔の粘膜も、グオングオンとおおきくふるわせられて。 裂けている部分が、より深く裂けて、床に血がしたたり落ちた。 「ひぃぃ……う……くるし……あ……壊れる……」 敬偉の、完全に理性を遠くにうしなって、口をあけ喘ぎ続けている様子に。修も、興奮してきた。 それに、後孔の裂け目から出ている血も。 目にあたらしかったし、中から泡だってでてきている自分の精液も。 異様な光景に見えた。 「何が壊れるの? 」 「あ……あ……おしり……お尻の穴…が……ひぃぃ……こわれる……」 敬偉は縛られたペニスをもどかしそうにゆらゆらとゆらして、修の服にすりつけようとしていた。 身体をうかせて、それからにげると、更に追うように。敬偉は身体を浮き上がらせて、必死でペニスの刺激を求めていた。 その様子に、修のズボンの中のペニスも、すっかり硬くなり、勃ちあがっていた。 「あぁ、私も、こんなになってしまったよ。 敬偉くんをみていたからね………」 修は、ズボンをずらして、敬偉の顔の前に、ペニスを突き出した。 「あ……あぁ……」 敬偉は、修のペニスを、よどんだ目で見つめた。 「舐めたいかい? 舐めさせて上げようか」 修の言葉には、絶対にそう言わなくてはいけない雰囲気が混じっていた。 それに、敬偉は思考力を完全に失っていた。ただ、言われた言葉を反芻するだけ。 その言葉の先に、何があるのかまで、考えられなかった。 「あぁ……な…なめたい……なめさせ…て」 修の言葉を繰りかえすのと同時に。 口の中に、修のペニスがねじ込まれてきた。 「ひぃ……うぐ……」 生暖かい感触に、口の中が満たされていく。 しかし、すぐにそれは苦しみにかわった。なぜなら、硬くなった先端で、グリグリと喉奥まで擦られたから。 「ひ……ぐ……」 下にはバイブを入れられ、口はペニスで覆われる。 声をあげることができなくて、敬偉は身体をビクビクと震わせた。それに、屹立したまま、身体の動きにあわせて揺れる、敬偉のペニスは滑稽だった。 「歯が当たるよ。きちんと、当たらないように。舐めなさい。 うまく舐められたら……。 そうだね。おちんちんのゴムを取ってあげてもいいよ」 「うぐ……ぐぅぅ……」 敬偉は、必死で、口の中に挿入されているペニスに舌を這わせた。それは、下半身のバイブの感触を忘れたいからでもあったし、早く、ペニスのゴムをほどいて、身体の中をグルグルと回り続けている快感を放出したいからでもあった。 だから、拙いなりに、必死で舌を這わせた。 口をすぼめて、吸ってみたり。裏筋を舌で舐めたり。 でも、修に前髪をつかんで、ゆさゆさと頭を揺さぶられて、強引に喉奥まで擦りつけられ、口腔内をグルリと掻き回されるがままになっていることがほとんどだった。 「あ……あ……」 口の中のペニスが、ブルブルッと震えたのが分かった。 「あぁ……イク……」 髪の毛を掴まれて、ペニスが引き抜かれる寸前。先端部分だけが唇の中に含まれた状態で、修のペニスから、ドクドクと精液があふれ出した。 「うぐ……ぐぅぅ…………」 舌の上に放出されたせいで、その苦みと生臭い味が、より濃厚に感じられた。 くさった魚の臓物のような匂いと、味だった。 吐き出したかったけれど。唇の中に、まだペニスがはいっていて、断続的にドクドクと精液がほうしゅつされているせいで、嚥下することしかできなかった。喉を通っていくときに、べったりと食道に精液が貼り付いているような気がして。 たまらなく不快だった。 「あ……あ……」 「あぁ……また、たくさん出てしまったね……。 敬偉くんが、舐めるから」 「う……」 反抗したくても、口の中のねばい、不快な感覚のせいで、なんとも言えなかった。 吐き気がこみ上げてきたけれど、なんとか喉奥にやりこめて、我慢した。 なんとしてでも、ペニスのゴムを取って欲しかったから。 それに、後孔に入れられたままのバイブのせいで、身体が痙攣するのを止められなかった。 「うぅ……あぁ……苦しい……」 頭がグラグラとして、目の前がチカチカと点滅していた。 身体の中をグルグルと回っている快感が、限界を訴えていた。 修も、敬偉の目が白眼をむきそうになっては、瞳が戻ってきているのを見て、「そろそろ限界か…」と悟った。 完全に気を失ってしまっては、面白くない。 「じゃあ、望み通りに、ペニスのゴムをほどいてあげるよ。嬉しいだろう」 修は、敬偉の身体から離れて、床に、肩をついて這うような、四つん這いの姿勢にさせた。 両手首を後ろ手に縛っているせいで、どうしても、下半身を高く掲げたような体勢になってしまう。後孔から突き出ている、緑色のバイブの取っ手が。滑稽だった。 「あ……あぁ……う……嬉しい……」 敬偉は、ガクガクとうなずいて、修の言葉を反芻した。 修が、満足そうに目を細めて笑みを浮かべた。 そうして、殊更ゆっくりと、ペニスのゴムに指をかけて、ほどいていった。 「あ……あ……」 じわりじわりと、締め上げられていた感触が、緩んでいく。 「う……」 敬偉は、身体がビクビクとふるえるのを止められなかった。 「だめ……あぁ……で……出る……」 ゴムが完全にペニスから離れると、自然とその先端から精液が垂れ流れるように放出された。 「あ……あぁ……」 出ていくのを、止めることが出来なかった。股間に力をいれても、勝手に精液が出て行ってしまう。 「あぁ……とまら…止まらない……」 敬偉の細い悲鳴のような声があがって、ペニスの先端から、今度は黄色い尿がシャアアと音をたてて、出始めた。 「ひ……あ……おしっこが……」 敬偉は、はずかしいのと、ペニスの先端からがまんしていたものが放出される快感とで、頭の中がグチャグチャにかき混ぜられているようだった。 恥ずかしくて、止めたいのに。 「止めたい・止めたい」と頭の中でおもうだけで、ペニスだけが別な生き物のように、勝手におしっこが漏れ出ていく。 「う……うぅぅ……」 敬偉は恥ずかしさで、唇を噛みしめて、床に広がっていく黄色い水たまりを見つめていた。 「あぁーあ……おしっこまで出てしまったね……」 修の、からかうような声が聞こえてきた。 ペニスは、全てを放出し終えると、大人しく、だらんと股間で垂れていた。 修の言葉が恥ずかしかった。 こんな風に、おしっこを我慢できないことなんて無かった。こんな歳で、「おもらし」をして仕舞うだなんて。 呆然とした顔で、敬偉は自分の放出した黄色い水たまりを見つめていた。 後孔に差し込まれたままのバイブのせいで、視界が揺れていた。 「さぁ、自分がだしたおしっこだろう。自分で舐めてごらん」 修は、敬偉の髪の毛をつかんで、身体を床の上でずらせて、ちょうどおしっこと精液の水たまりが、顔のあたりに来るようにした。 「や……やめて……頼むから……あぁ……」 ぷうんと、アンモニア臭が鼻をついた。これを舐めるだなんて。気持ちわるくて、胃の奥から、酸性の胃液がこみ上げてきそうな気がした。 「舐めないのかい? だったら、おもらししてしまうペニスなんて、切り落としてしまおうか」 「ひ……」 修の呟きに、敬偉は身体がビクンと震えた。 何気なさそうに呟いた言葉だけに、真実味があった。 修だったら、何の躊躇もなく、そういう事をしそうな気がした。 「た……頼むから……許して……」 敬偉は、哀願するように、涙で潤んだ目を向けた。でも、それは、修の加虐心を刺激しただけだった。 「さぁ、ほら。早く舐めるんだ」 修の声には、笑いが混じっていた。敬偉は、絶望的な気分が心の奥底から湧いてきていた。 それに、「切り落とす」という言葉が。頭の中に響いていた。 そちらの恐怖の方が、強かったせいかもしれない。 「う……う……」 敬偉は呻きながら、ゆっくりと。 床に広がっている尿の水たまりを舌をだして、なめていった。 ピチョンピチョンと、敬偉が舐めている音と、バイブの機械音だけが響いている。 「唇をつけて、吸うといい。そうすれば、早く舐め取ることが出来るよ」 修は、敬偉の髪の毛を撫でながら、耳元にささやいてきた。 言うとおりにしないと、何をされるか分からない。それに、バイブの刺激で、頭の中の考えが旨くまとまらないせいもあっただろう。 「あ……あぁ……」 敬偉は声をあげながら、唇を尿の水たまりにおしつけて、ズズッと勢いよく吸い上げた。 「う……う……あぁ……」 口の中が、尿の酸っぱい味で満たされていき、喉の奥まで流れていく。 ひりひりと、食道が燃えているように、痛かった。液体が、食道にしみて、胃まで下っていって居るのが分かる。 「う……う……」 敬偉は声を上げながら、必死で床の尿を吸い上げた。 それは、いつまでたっても終わらないような気がした。 底なし沼を吸い上げているような、喉の奥のヒリヒリとした痛みが、いつまでもとどまっているような錯覚も起きた。 「あぁ、だいぶと綺麗になったね」 「あ……あ……」 修に髪の毛を掴まれて、顔を尿のみずたまりから引き上げられた。 顔全体が、尿と精液とで汚れていて、それが乾燥してかたまりつつあり、痒くてしょうがなかった。 修は、その表情を見ていると、なんだか、心の奥がザワザワと沸き立つような気がした。 それは、今までに感じたことがない感情だった。 こうして、「狩り」をして、狩ってきても、ある程度、快感を貪れば、あとは、なんだか、相手が「物体」のように感じて、もう魅力を失ってしまう。でも、敬偉の表情を見つめていると。もっと、貪りたいような心地が湧いてきていた。 これは、どうしたことだろうか……と修も、心の中で動揺していた。 ただ、汚れている敬偉の顔をもっとよく見たくて。 修は、傍にあったタオルで、グイとその顔を拭ってみた。 「う……あ……あぁ……苦しい……」 バイブの音が、響いている。それが、苦しくて堪らないのだろう。 敬偉は、「う……う」と喉を鳴らしていた。 修は、ジッとその顔をみてめて、頬を撫でた。しっとりとした肌の感触が。 手のひらに心地よかった。 「お……お尻の……と……取って」 敬偉は、掠れた声で、修に、滲んだ瞳をやっていた。 修は、「狩人」だから。 いつも、狩ってきた人間は、事を終えると、バラバラにして、肉をその骨からそいで、食べていた。そうすれば、もとは人間だった、という形跡がどんどんと無くなっていく。 それに、そうした方が食費も助かるし、なによりも、遺体の処理が簡単だった。 あとは、残骸を、あちらこちらの山に埋めたり。 県を越えて、あちこちにばらまいて、うめると、大抵はばれない。 今まで、ばれたことはなかった。 ただ、敬偉に対してだけは、なんだか、このままバラバラにして処理してしまうのが惜しいような気がした。 「あ……あぁ……」 床にはって、苦しんでいる敬偉をみていると、もっと、敬偉のいろいろな顔が見てみたい気がした。 しかし、そのことは修の中で、たまらない不安となって、大きくなっていった。 今までは、事をおえると、何の感情も湧かなかったのに、今回はどうしたことだろうか…。自分が代わってしまったのか。 そう考えると、たまらなく不安になってきた。 修は、バイブを入れたままの敬偉から、ジワリジワリと離れた。 本当は、ずっと見続けていたいけれど。どうして、そういう感情が湧くのか。 不安で堪らなくなってきた。 修は、敬偉の部屋から出て、ドアを閉め、2DKのもう一部屋の方に行き、ベッドに腰掛けて、考えた。 自分の指先が、微かに震えていた。 それは、自分にとって、「敬偉」だけが、特別な存在なのかも知れない…という不安と。 もしくは、自分が慈悲深い人間に代わってしまったのだろうか…という懸念のせいだった。 でも、どう考えても、敬偉を「バラバラ」にしてしまうのは、たまらなく惜しくて。切ないような気がした。 「特別な人」というのを作るのは怖かった。 なぜなら、そういう人ができると、「嫉妬」をしたり「自分が好かれたい」と不安になったりする。 恋や愛とは、自分は遠い存在で居たかった。 なのに、自分の心に反して、敬偉がそういう存在になってしまっているのかも知れない。 それは、今まで何度も蕎麦屋で敬偉の笑顔を見続けてきていたせいかも。 もしくは、自分が慈悲深くなったのかも。 これも、「自分が変わってしまった」とおもうと、アイデンティティーが崩れていくようで、不安になってきた。 修は、拳を何度かにぎって、震えている指先を止めようとした。 敬偉が特別なのか。 自分が代わってしまったのか。 修は、自分を落ち着けるために、深呼吸をして、ベッドに横になった。 当然に、敬偉が居ている部屋からの物音は一切しない。防音のスポンジをしきつめているせいで、どれだけ敬偉が悲鳴を上げても、それはあの部屋の中に響くだけで、一切外には漏れ出てこなかった。 修は、ベッドに横たわったまま、しばらく考えていた。 しかし、そうしているうちに寝てしまっていたらしい。 敬偉は、どれだけ上げても無駄な悲鳴をあげ、後孔に入れられたままのバイブに身体をゆらゆらとゆらしていた。 何時間もその状態のままで放置されて。悲鳴をあげていた声も、じわじわと掠れてきていた。 疲労と、後孔の刺激に、気を失うようにして、敬偉も意識を手放していた。 狭い2DKの部屋の中で。2人の男が別々に眠りについていた。 ただ、2人とも、自分のアイデンティティーの崩壊を危惧しているこだけが、唯一の共通点だった。 |
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2013 101 20 UP いやはや……本当に、かつて、これほど書くのに難儀した小説はなかったです、と言っていいほど、書くのに難儀した小説でした。とにかくキャラクターが動かない。 設定は、或程度頭の中で決まっていて。あとは、キャラクターが動き出してくれるのを待っていたのですが、いつまでたっても、全然動かない。私の設定が悪かったのか……。 今度の小説では、「神視点」(三人称で、2人の心理両方を書く方法)でいこう!とおもったのがいけなかったのかなぁ やはり、一人称で書いた方が良いのかな。 でも、いままでも、三人称でも書いたことがあったけれど、ここまで動かなかったことはないです。 だから、もしかしたら、読む方も、読みづらいのでは…などと不安だったのですが。 それでも、いちおう難産の証として、サイトに上げることにしました。 読み苦しかったらすみません。 2010 11 01 改題致しました。 この作品の続きを考えたら、タイトルがあまりにふさわしくないので、変えさせていただきました。 |
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