まなじり
(1)

「先生が好きなんです」

唐突にそう言われたのは、ちょうど家庭教師を初めて3ヶ月ばかりが経ったとき。7月のはじめのころだった。

「え……」

最初は聞き違いかと思ったけれど。鳥乃美琴はただまっすぐに天川龍の方をみつめていた。

 

龍は法学部の大学院生だったので学費のために家庭教師のアルバイトをしていた。今は3人を受け持っていて、月給は8万円程度。そのほとんどを、勉強関連の本を買ったり、法律関係のセミナーなどに参加したり、大学院の学費にまわしたり…とした。だから、比較的に真面目な学生であった。いままで何度か女性と交際をしたことはあったけれど。どの女性も、龍の心を満たしてくれる物ではなかった。

 

それは、半分は勉強のせいでもあったけれど。あと半分は、妹のせいでもあった。

 

龍には、2歳年下の妹が居る。これが、とてもしとやかで、大人しく龍に対しても従順であった。身びいきを差し引いてもかなり理想的な女性である…と龍は思っていた。

 

だから、つい交際相手も、妹と比べてしまう。そうすると、必ずやどこかしこかに「妹よりも劣る」という点が出てきてしまう。そうすると、どうしてもそれが気になって目に付き。相手に対しての愛情というものを持つことが出来なくなる。

 

それは、なんとかしなければならない…と感じていた。いつまでも、妹にとらわれていてはいけない。

 

しかし、龍が鳥乃美琴の家庭教師を引き受けたのも妹のせいでもあった。「美琴」という名前が妹と同じであったからだった。だから、最初はあまり書類を見ずに。自宅から若干遠い場所ではあったけれど「引き受けます」と言った。

しかし、実際に「鳥乃美琴」をみて、落胆した。鳥乃美琴は男子学生であっのたのだ。

 

ただ、引き受けたものを、今更「辞めます」ということもできない。龍は週に二回。鳥乃美琴の家を訪れ、彼と椅子を並べて勉強を教えていた。普段であれば、家庭教師先の子の名前は、下の名前で「××ちゃん」とか「××くん」などと呼ぶことが多いのだけれど。鳥乃美琴の場合は、なんとなく妹と同じ名前を呼ぶのが恥ずかしく、「鳥乃君」とよんでいた。

しかし、週二回通っているうちになんとなく「鳥乃美琴」にも妹と共通しているような感覚を覚えてくるようになった。それは、鳥乃美琴が俯いてノートに数式を書いているとき。そのシャツの襟首から覗く白い首が、妙に白く感じるのだ。妹の首も白い。それに、「先生、どうでしょう」なとど質問をするとき。その目尻がうっすらと赤いように感じる。もしかして、「同じ名前」であると、どこかしら似てくる箇所があるのかも知れない。

そうかんじていた矢先の事だった。

 

「先生……」

龍は鳥乃美琴の声で、ハッと現実に意識が戻った。なんとなく妹とだぶる青年の顔をみて、ゴクリとツバを飲み込んでから、教科書に目を落とした。

「私も、鳥乃君の事は好きだよ」

鳥乃美琴が言った「好き」というのは恋愛感情をふくんだ意味の事であっただろうけれど。さり気なく聞き流す振りをした。「好き」という意味を、一般的な意味まで引き落としてにっこりと笑って見せた。

すると、鳥乃美琴はやや不満そうな顔になってから、すこし考えるように俯いて、爪を噛むような仕草をした。

 

妹の美琴も、爪を噛むのがクセだった。悔しいことがあるときとか。何かしら、苛々としているときなど。よく爪を噛んでいた。だから、「爪なんか噛むんじゃない。下品だぞ」と何度か指摘したことがあったけれど。そのたびに「お兄ちゃんはいちいちうるさいわ…」とイヤな顔をされていた。

 

「そういう意味の好きではなくて…。僕は、先生の事を本当に好きなんです。

 先生と、お付き合いがしたい…と思うくらいに」

鳥乃美琴の姿に、妹の姿を重ねていたから。一瞬鳥乃美琴の言葉が、妹から発せられたように感じた。

そう…。もしもし妹からこんな言葉を言われたら、自分はどう思うだろうか。きっと、自分は半狂乱してしまうほどに心が躍り、嬉しいに違いがない。

 

「………」

龍は、ゴクリと唾を飲み込んだ。そうして、頭の中の想像をかき消した。

それは、想像してはいけないことだったから。自分の実の妹に懸想をしているだなんて。そう。それは、異常者である、と言うようなことだった。

「鳥乃くん…。その…きっと、君は何か勘違いをしているんだよ。

君くらいの年頃だったら、みんなでクラスの女子の話題で持ちきりになるだろう。それに、中には交際を始めている生徒も居るかも知れない。そういうのに触発されて、私の事を好きだ、と勘違いして居るんだよ。

君くらいの年頃だと、大人に憧れる物だからね」

龍は鳥乃美琴から視線をそらしたままでそう言った。そうすると、鳥乃美琴は悔しそうに唇を噛んでいた。

そう、その仕草も妹と似ているところがある…とかんじた。

 

やはり、同じ名前だと、どこかしら似てくるのだろうか。それとも、同じ名前だから、どこか似ているところがあるに違いない…と自分が考えて、勝手にそういう点を見つけ出そう…としてしまっているのだろうか。

 

「違います。本当に好きなんです」

鳥乃美琴はなおも言葉を続けたけれど。龍は、時計をみて、立ちあがった。

「そろそろ時間だね。今日は雑談がすぎて、あまり勉強ができなかったね。

 だから、宿題は、ドリルの22ページまでするように」

鳥乃美琴は俯いて、「はい」とだけ小さな声で呟いた。それは、渾身の力をこめて告白をしたのに、流されてしまった…という落胆の色を濃く示していた。その表情をみつめて、「やはり、妹とどこか似ている」と感じた。

 

だから、龍の頭の中にはなんとなく鳥乃美琴の言った「好きなんです」という言葉がへばりついているようだった。サラリとながしてしまうのが大人な行為だろう。それに、自分はそうしなければいけない。相手は、生徒だし、まだ17歳なのだ。

 

龍は、できるだけ鳥乃美琴の言葉を思い出さないように。あまり意識をしないようにつとめよう…と考えた。ただ、鳥乃美琴を見る目は違ってきていた。やはり、目を伏せたときとか。チラリと龍の顔を見る仕草などが。妹と似ている気がする。いまにも、その口から「お兄ちゃん」という言葉が出てきそうだ、とおもった。

「好きだ」と言われたから、どこか共通点を見つけよう…としてしまっているのかも知れない。龍は、そういう妹との共通点を見つけだすたびに。「う」と唾を飲み込んでいた。それは、グラリと気持が鳥乃美琴の方に傾くのを我慢するためであった。

 

しかし、転機は突然に訪れた。

ある日、家に帰ると、食卓に妹と見知らぬ男性が並んで座っていた。そうして向かい合う席には、自分の父が座って、茶を飲んでいた。

龍は一瞬、初めて目にした「他人」にびくりとしたけれど。母が「龍、美琴の彼氏さんよ」という言葉で、現実に引き戻された。

 

「あ、お義兄さん初めまして。山下拓海といいます」

その男は椅子から立ちあがって、深々と龍に頭を下げた。

突然の事で、龍はとっさに反応できなかったけれど。その青年が随分と若いし、顔は赤ら顔でお世辞にも「ハンサム」ということができないのに、不快感を覚えた。

こんな不細工で、若い男が妹の恋人なのか…と思うと、思わず眉をひそめた。

「お兄ちゃん。私たち、結婚するの」

妹が、その山下という青年の袖をひいて椅子に座らせてから、まっすぐに龍の方をむいてそう言った。

「え」

一瞬、言葉の意味が分からなくて妹の顔を見たけれど。妹の美琴は嬉しそうにニコニコと笑って、龍を見上げていた。

「今、3ヶ月なの。赤ちゃんがいるのよ。私の中に」

山下はやや恥ずかしそうに頭をかいていた。龍の父は黙っていたけれど。

「で……でも、美琴。お前、まだ大学四年生じゃないか…」

龍はやっとそういう言葉絞り出した。すると、美琴は、「ふふふ」とわらって、山下という青年の腕に、自分の手を絡めてた。

「予定日は卒業をしてからだから、問題ないわ。それに、拓海くんはもう内定をもらっているし。お兄ちゃんにも姪か甥ができるのよ」

妹の言葉が頭の中に入ってきて、理解をするまでに時間がかかった。

母が「そういうことだから、しょうがないでしょう…」龍に呟いていたけれど、うまく返事をすることができなかった。

「そうか…」

それだけを言うのが精一杯で、龍は山下に会釈をしてから、自室に引き下がった。

 

そうして考えていると、無性に腹が立ってきた。いや、「腹が立つ」ということばだけでは言い表すことが出来ないような苛立ちがわき起こってきていた。

今まで清廉としていて可憐でキレイだとおもっていた妹が、あの「山下」という青年に汚されていたのだ。何度、妹と山下は性交渉をもったことだろうか…。あの不細工な男の下に組み敷かれて、犯される妹の姿というのが頭の中に浮かんできていた。

「ああああ」

声をあげて、髪の毛を掻きむしり、その想像をけそうとしたけれど。どうしても後から後から浮かんでくる。しかも、妹の体内には山下の子供がいるのだ。次第に、妹の腹は膨れていくだろう。それは、あの山下の分身が、妹の中で作られていって居るのだ。

それを、自分はただ黙ってみているしかないのか…。

「うぅぅぅ」

龍は、本棚にある本の全てを、手でなぎ倒して本棚から落とした。しかし、それでもまだまだ物足りなく感情の乱れを持っていく先がなかった。

 

「あぁ、あぁ」

頭の中では、ひっそりと立っている可憐でキレイな妹に、あの山下がペシャリペシャリと泥を撫でつけている光景が浮かんできていた。そうして、その泥は、妹の膣内にまで投げ入れられている。そうして、妹の腹が奇妙に膨れてきて…。

 

自分の聖域が汚されていたことをしり、龍は、1人、部屋の中で身体をグラグラと揺らして暴れていた。部屋の床には本や机の上の文具などが落ちて乱雑に散らかっていた。それでも、まだまだ沸々と苛立ちは湧いて出てきていた。

龍はギリギリと歯をかみしめて。そり夜は眠ることが出来なかった。

 

龍は「清廉な妹を持っている」という自分のアイデンティティーが崩されたような気になっていた。だから、それからしばらくは呆然と半分歯抜けのように日々を過ごしていたけれど。

 

「先生、やっぱり、僕は先生のことが好きだと思います」

鳥乃美琴の解いた問題を採点しているときに、不意に、またそう言われて、一瞬、ギョッとした心地で美琴の方を見つめ返した。

彼はジッと龍の顔を見つめていた。美琴の顔はやや色白だったのでそれが、より彼が清廉としていてキレイなような気にさせた。

「クラスの友達なんかが、よくクラスメイトの女子の事を好きだ、と言ったりしていますけれど。そういう話題が出たときに、僕が思い浮かべるのは、いつも先生です。それに、夜も「あぁ、先生は今頃どうしているのかな」などと思うと、眠れないことがあります。先生は格好がいいから、もしかして恋人が居るのかも知れない…とおもうと、悔しくて眠れないこともあります。

 これは、「恋」ではないんでしょうか…」

彼の言葉が、とても清潔なものに感じられた。それは、何物にも汚されていない、まっ白なキャンパスに向かい合っているような気分だった。

 

自分の妹の美琴は、もう膣の奥まで汚されてしまっている。

それに比べて、この鳥乃美琴のなんと清潔で汚れを知らないことだろう…。心の中で妹の「美琴」と目の前の「鳥乃美琴」がだぶって見えてきた。「鳥乃美琴」は、まだ汚される前の妹のように見えてきた。

「………」

そう感じると、心の奥から欲望がこみあげてきた。

自分の妹は、もうすでに汚されてしまっている。だったら、自分も、この「鳥乃美琴」を汚す資格があるのではないのだろうか…。

この「鳥乃美琴」は、今はもう居なくなってしまった、「汚れを知る前の妹だ」と思えてきた。

「あ……あぁ……そうか…」

龍の心の中で、いろいろな葛藤がせめぎ合っていた。

「先生…」

しかし、鳥乃美琴が白い指で、龍の掌を包んできたことで、一気に欲望が爆発した。

 

そう、自分には、この身体を汚す価値がある。だって、「妹」だって、汚されてしまっているのだから…。

 

「鳥乃……いや……。美琴…」

そう呟いて、グイと鳥乃美琴の手をつかんで、椅子から床に引きずり落とした。

「あ……あ」

鳥乃美琴は微かに悲鳴を上げたけれど。床の上に仰向けにさせて龍はその上に覆い被さるようにすると、鳥乃美琴はジッと龍の方をみつめて、動かなかった。それは、龍がしようとしていることを許容しようとしているのか。もしくは何も想像が浮かばなくて、ただジッとしているしかないのか。判断が付かなかったけれど。

 

龍の頭の中は、この目の前の白い青年の事で一杯になってきていた。

それに、こうして覆い被さって見下ろすと、本当に妹に似ている。体格も、鳥乃美琴は華奢なので、妹と変わらないように思えた。それに、唇の薄いところ。目尻が切れ長で、少し赤いところ。

「あぁ………」

龍は、身体の下の青年が、「まだ汚れていない頃の妹」のような気がしてきていた。どうせ、誰かに汚されるならば。自分の手で汚してしまいたい…。

そう、本当はそうすべきだったんだ……。

 

龍は性急に鳥乃美琴のズボンのファスナーを下ろして、ベルトを外した。

「あ・あ……」

鳥乃はやや抵抗するように龍の手に自分の手を重ねたけれど。その手には力が入っていなくて。ただ、重ねられているだけだった。だから、龍は容易に鳥乃美琴のズボンとパンツを引き下ろして、下半身を露出させた。

「せ……先生……」

美琴はやや恥ずかしそうに。性器を隠そうと太股を擦り合わせていたけれど。グイと太股をつかんで足をおおきく開かせて、その間に身体を押し入れた。

「ひ……あぁ……そんな…」

羞恥心のせいか、美琴は両手で顔を隠すように覆っていた。顔が見えないぶん、余計にその龍の身体の下にあるものが。妹とつながっているように感じた。白い腿。それに、薄い胸。華奢な両手。

「あぁ……美琴…」

龍は呟いたけれど。それは妹を呼んでいるのか。鳥乃美琴を呼んでいるのか。自分でも分からなかった。ただ、目の前にさらされている白い太股の間の無垢なペニスに目が奪われていた。それが奇妙に無様に見えて、乱暴に手で握ってみた。

「ひ……いた……あぁ……」

グイグイと握り続けると、ジワリジワリと勃起してくる。他人の男のペニスをいじる、というのは初めてだった。だから、「あぁ、こんな風にペニスは勃起していくのか…」というのを冷静な心地で観ているような気がした。何度も何度もそれを握りしめては弄っていると、まるで妹の胸を揉んでいるような気分になってきた。妹の胸も柔らかくて、弾力があるに違いがない。

こうして手で揉んだら、妹も、この鳥乃美琴のように喘ぐのだろうか…。声をあげて、喉をのけぞらせて…。

「せ……先生……あぁ」

夢中で握っていたせいで、美琴の声でようやくソレが完全に勃起しているのに気付いた。先端がキラキラと光っている。それは、先走りの液のせいだった。今にもイキそうになるソレから手を離して、龍は美琴の膝裏をつかんで、グイと膝が床につきそうな程に身体を折り曲げた。

「あ……は……恥ずかしい……」

自然と、目の前に美琴のペニスかに双球。そうして、尻の割れ目の奥の後孔が目に入ってくる。

きゆっと窄まったままの後孔の入り口を撫でてみた。

それは、龍の目には、まるで「膣」のように見えた。そう、妹の「膣」も最初にこんな風に固く窄まっていたに違いない。それを、あの山下とかいう青年がこじ開けてペニスを入れ、散々に犯したのだ。

「あぁ……くそ……」

そうぞうすると、たまらない怒りがこみあげてきていた。今、目の前にある後孔の窄まり。その誰にも汚されていないものは自分にこそ汚す権利があるのではないのだろうか…。

いや、そうに違いない。

この固く窄まった中に、自分のペニスをねじ込んで、むちゃくちゃに犯してみたい…。

「あぁ……きっちりと口をとじて……」

龍はそう呟いて、その後孔の窄まりを指の腹で撫でてから、人差し指をグイと押し込んだ。

「ひ……いた……いたい……」

美琴が甲高い悲鳴混じりの声を上げた。たしかに。押し入れた指はキュッと締めつけられて、それだけで後孔はヒクヒクと痙攣をするようにしてなんとか排出しよう…としているようだった。おもったよりも、ずっと固く窄まっている後孔が意外だったけれど。

「…………」

龍は、それだけ鳥乃美琴が清潔で、まだ汚れを知らない…という証のようにかんじて、ニヤリと笑んだ。

まだ誰にも踏まれていない新雪を、自分が初めて足跡を付けていくときのような。奇妙な優越感を感じた。

「痛いかい?

「あ……あぁ……いた……」

美琴はガクガクと頷いて、目には涙をにじませていた。

指一本でも、これだけの抵抗感なのだ。とてもペニスが入りそうにない…。何か、滑りが良くなるような物が必要かもしれない…。

龍は、グルリと美琴の室内を見回した。そうすると、ベッドサイドのミニテーブルに置かれている鏡の前に「ヘアジェル」があることに気付いた。高校生だから、オシャレにも一晩期を使う時期なのだろう。ヘアクリームや、スプレーなどと一緒に、チューブに入った透明なヘアジェルが置かれている。

「あぁ、ちょうどいいね……」

龍は一旦美琴から身体を離して、それを取りに行った。しかし、その間も、美琴の顔をかくしていた両手をつかんで、自分の膝裏をつかませた。

「ひ…」

美琴は恥ずかしさのあまりか、小さく悲鳴をあげて、顔を横に向けて逸らしたけれど。そのそらした首の白さが、妹を思い出して、より興奮した。

「こうして、自分で膝裏をつかんで居るんだよ」

龍がそういうと、美琴は唇をキュッと噛んだ。それが、同意の仕草のようだった。

 

龍がヘアジェルを手にして美琴の傍に戻ってきても、言われたとおりに美琴は膝裏を自分でつかんで、身体を仰向けで2つに折り、下半身を高く掲げていた。

しかし、チラと龍の方に視線をやり、その手に握られているヘアジェルを足偽装に見つめた。

「君のお尻の穴はギチギチに固くてキツイからね…。指一本でも、精一杯という感じだよ」

そうささやくと、美琴はやや恥ずかしそうに視線をそらした。

龍は、美琴の目尻をジッと観てから、下半身に視線を移した。さっきまで勃起していたペニスが、ややゆるくなっている。ヘアジェルを開けて、尻の双丘を指で割り広げた。先ほどまで龍の指を含んでいた後孔が見える。今は、キュッと窄まって、口を閉ざしているけれど。ヘアジェルを少しだけ指に絞り出して、その固く窄まった後孔に撫でつけてみた。

「あ……つ…冷たい…」

美琴の呟きが聞こえたけれど。後孔にジェルを撫でつけるようにしながら、指をゆっくりと入れていった。きつい後孔の中に指がジワリジワリと入っていく。

「あ……あ…」

気持ちが悪いのか、美琴の身体はヒクヒクと震えていた。指一本を奥までいれて、中をグルリと掻き回してから、指を引き抜いた。そうすると、一瞬、後孔の中の紅い色が見えたような気がした。

「さぁ、入れるよ…」

龍はささやいて、美琴の後孔の窄まりに、ヘアジェルのチューブの先端をグリグリとねじ込むようにして押し入れた。

「い……いたい……あぁ…」

美琴には、龍がしていることが見えなかったのだろう。ただ、上を向いていると蛍光灯の光が目に差し込んできてまぶしいせいか。もしくは、顔を龍にみられたくないのか。顔を横向けて、ただ何もない床を見つめていた。

龍は、その反らされた首に軽く口づけをしてから、グッとチューブを強く握った。

「ひ……ひぃぃ……ひぃぃぃ……」

美琴のくぐもったような悲鳴が聞こえた。チューブを強く握るたびに、悲鳴が上がる。

それがまるで連動しているようで、龍の耳に愉快に聞こえていた。

だから、グイグイと何度もチューブをおしては、美琴の悲鳴をきいていた。

「あ……あぁ……全部はいってしまったね…」

それが愉快で、何度も何度もチューブをにぎっていたせいか。中身の全てが美琴の後孔の中に入ってしまったらしい。気が付けば、握りしめていたチューブは完全に空っぽになっていた。

「う……うぐ……うぐぅぅ……」

チューブを抜き去って、両手で尻の双丘を左右に割り広げて、その後孔を覗き込んでみた。ジェルのせいで、テラテラと光っている。さっきまでは固く窄まっていたのに。

今は、美琴の呼吸にあわせて、そこがヒクヒクと震えて、中からジェルを少しずつ溢れさせている。それは、見ていて目に新しく。愉快なものに見えた。そう、後孔だけが別な生き物のようだった。

「あぁ、せっかく入れたのに、中からどんどんと溢れてきている…」

龍はそう呟いて、その後孔の中に指を差し入れてみた。

「ひ……あ」

グチュリと音がして、後孔の粘膜が絡みついてくる。しかし、ジェルのせいでさっきまでよりは比べ物にならないくらいに楽に指を入れることが出来た。だから、2本目として中指も入れてみた。

次のページへ
HOME