賭けた男
(1)

新しく雇った家政婦は、年配で冴えない女だった。募集をかけると、色々な人が面接に来たけれど。あえて満は、その「田中真知子」という44歳の醜女を採用した。

それは、彼女がいままでいろいろな家を家政婦として渡り歩いてきていたということ。

それから、満と花菜・そして耕平にも何の興味も持っていないような無表情で愛想がないところがいいと思った。

家の中をあれやこれやと詮索されては困る。ただ、言いつけた仕事を淡々とこなしてくれる女がよかった。花菜は「誰を雇うかは、貴方にまかせるわ」と言っていたので、満は「田中真知子」に「これからよろしく頼みます」と挨拶をした。彼女は「はい」と言っただけで、相変わらず、無表情だった。

 

それに、若く美しい女性を雇い、花菜に詮索されることや、万が一耕平がその「家政婦」を好きになってしまっては困る。満にとって、家政婦とは、ただ淡々と家事をこなし、秘密を守ってくれさえすればいいだけだった。

 

ただ、田中真知子を雇ったことで、満の行動は少し大胆になった。

それは、たとえ耕平と淫らな行為をして、彼の服やシーツが汚れても、花菜を通さずに家政婦に洗濯を頼むことが出来る。家政婦はそのシーツの汚れの原因などまで言及してこなかったし、花菜に言いつけることもなかった。

 

だから、「家政婦」をやとってから、満は毎日のように、花菜の目を盗んで耕平の部屋を訪れた。

最初は「何をしに来たんだ」などといって、満を拒否しようとしていたけれど。

「おしっこを私たちのベッドでもらしたのは誰でしたっけ? そんな歳でおもらしをしたのは、誰ですか?

などと言うと、耕平はグッと黙った。

それに、ズボン越しにでも彼のペニスをつかんで、強引に揉みはじめると、耕平は案外簡単に籠絡された。

それは、彼がいままで快感を知らなかったせいだろう。

初めて知る快感に当惑し、ただ満に刺激されるままに「あ・あ」と声をあげて、ベッドの上に倒れ込んでいた。

だから、満は毎日のように耕平の部屋を訪れていた。

そうして、満のペニスを勃起させると、自分のペニスも剥きだしにして、2つを一緒に刺激する。互いの熱いペニスが擦れ合うと、耕平はもう完全に快感に飲まれて「あぁ」としか声を出すことが出来なかった。

ただ、喘いでいる間も、彼の顔は美しかった。

反らされた喉に、何度も噛みつくように口づけた。そうすると、また彼のペニスがビクビクと震える。

それに、絶頂を極めると、耕平は「怖い…怖い…」と泣いた。「あぁ、どうして自分の身体が、自分のものではなくなっていってしまうんだろう…。怖い…怖くてたまらない」と毎回、ベッドに顔を伏せて泣いていた。その姿も、満の目を楽しませていた。

 

普段は不遜で傲慢な態度を取っている彼が、淫行のあとだけはそうして泣いている。まるで、まだ本当に幼い子供のようだ…と思った。

ただ、満の欲求はじわじわと大きくなっていく一方だった。

 

そう、こうしてペニスを擦り合わせるだけではなくて、彼の中に自分のペニスを入れたらどうなるだろうか…。もしくは、彼の口に、自分のペニスをねじ込む…。

何度も頭の中で妄想をしたけれど。

ただ、ペニスを扱いただけで、そうして泣いている彼には、まだまだそう言うことはとても出来ないような気がした。

「でもね、耕平さん。これはだれでもがしていることなんだよ。ね、私と花菜もしていただろう。みんなしていることなんだ」

「み……みんな…していること…。これが…」

耕平の声は震えていた。

「そう。だから、怖がることはないんですよ。すぐに馴れていきますよ」

「で……でも……」

耕平は、まだ何かを言いたいようだったけれど、満がやんわりと萎えた耕平のペニスを握ると、彼は言葉を止めた。

 

満は、少しずつ、真っ白な彼のキャンパスに、自分という色を垂らしていっている…と思った。そう、まだ垂らしているだけで、ポツリポツリと白いキャンパスの上に、絵の具が光っているだけ。まだまだ余白だらけだ。そう思うと、満の気持ちも奇妙に興奮した。

 

花菜は満と耕平の淫行には全く気付いていない様子だった。

むしろ、耕平の事を怖がってさけていた。家政婦を雇ったことで、花菜と耕平の距離は、より遠くなっていっていた。特に、耕平は淫行の最中以外は横柄な態度を取っていることが多い。それは、やはり「病人」として過保護に育てられ甘やかされていたせいだろう。

花菜が玄関に生けていた花を、「趣味が悪い。見るに堪えない」などと言ってゴミ箱に捨てたり。花菜が作ったケーキを食べては「まずい。お前はこんなまずいものしか作ることが出来ないのか」などと冷たい表情で花菜を真正面から見据えて、言っていた。

 

だから、自然と耕平の食事は家政婦の真知子が作ることになってきていた。耕平は、真知子の手慣れた食事にはあまり不平を言わなかった。

 

花菜は、よく満に「耕平さんはなんだか怖いわ…」と閨の中で呟いていた。それは、言下に「耕平を家から追い出したい」というような含みがあったけれど。天涯孤独だった満に、やっと現れた親戚、ということで、なかなかはっきりとはそう言い出せないようだった。ただ、花菜と耕平の距離が遠くなればなるほど。満には都合が良いような気がした。

そう、耕平が花菜に「自分がしている淫行」を漏らすことはない…という安心感を得ることが出来る。

 

満は、耕平の部屋へと足を運ぶ回数が増えてきていた。

ただ、いつも満が耕平の部屋を訪れると、彼は一瞬「ひ」と言って満を見上げる。それは、これからなされることへの恐怖の用でもあったし。じわじわと身体が慣らされて言っている快感への期待のようでもあった。どちらにしろ、満は、耕平の、「一瞬引きつった表情」をみると、心がザワザワと波立ち。胸の奥に秘めていた快感が揺り起こされるように感じた。

「い……いやだ…」

満が耕平の腕を掴むと、彼は小さな声でそう呟いた。それはまるで本当に幼い少年の呟きのようにたどたどしく。より満を興奮させた。

「嫌といっても…。これはみんなしていることなんだよ。耕平さん…。ね、みんなしていることを、自分だけがしないというのはおかしいでしょう」

満は耕平の腕を掴んで、強引にベッドの上に引き倒した。それでも、耕平は目をキョロキョロと動かせて、「で…でも」と呟いていた。

「ほ……本当にこんなこと…。ぼ…僕はしらない…」

「それはあなたが病気だったからですよ。病人は、こんな事をしないんです。だから、みんな貴方に遠慮して言わなかったんでしょう。でも、今は健康体だ。

 健康体の人間が、これをしない、というのは、とてもおかしいことなんですよ」

「あ……そんな……。本当に? じゃあ、ぼくのお兄ちゃんも…。お母さんも…お父さんも…。

みんなしていたの?

満は耕平と接する回数が増えていくにしたがって、彼の「不遜な態度」というのがわざとしているものではなくて、ただ「彼の知能が幼いせいで行われている」ということに気付いてきていた。

病気のせいで、同年代の者と接することもなかったのだろう。彼のまわりには、ただ「病気だから」と彼を甘やかす家族と、医者・看護師しか居なかった。だから、彼の頭の中は、まだほんの5歳児程度で止まっているようだった。子供の我が儘。そう思えば、彼が花菜に辛く当たるのも。ただ自分の感情をむき出しにすることしか知らなくて。彼はそれに従っているだけ。

満は、その外観と中身との奇妙なギャップに魅せられていた。

 

「そう、耕平さんのお兄さんも、両親も。街をいく人たちもみんながしているんですよ。貴方だけがしない…というのはヘンでしょう」

「う……うん……」

満がささやいて、耕平のズボンとパンツをずらし、足から引き抜いた。彼は下半身を露出することにはさして羞恥心がないらしく、ただじっと満の手の動きを見ていた。ただ、その手が、剥きだしになったペニスを握ると。

「あ……あ」と少し慌てたような声を上げた。

「で…でも……。あぁ……お…おちんちんをこすられると……。

 な…なんだか……う……う…」

指の動きをどんどんと早めていく。耕平は必死で理性にすがろう…としているようだったけれど。目尻がだんだんと紅くなって瞬きの回数が多くなっていく。そうして、頬も紅潮し、唇が「あ」という形にだらしなく開けられる。

その姿を見ていると、必然的に満も自分の下半身に快感が溜まっていくのを感じた。

自分のズボンとパンツもずらして、耕平のペニスと合わせて一緒に刺激していく。そうすると、自身のペニスもはっきりと勃起していくのが分かった。

「あ……あつい……へん……う…う」

耕平は唇を開けては熱い息を吐いていた。それが首筋にかかると、ゾクゾクとした。

ただ、いつもいつも同じようにペニスを合わせて擦るだけでは。満はそろそろ満足できなくなってきていた。

そう、この無知な青年には、どうとでも教え込むことが出来る。彼には、頼る相手というのが満しか居ないのだから…。

そう考えていると、満の頭の中に、すこし残酷な想像が浮かんだ。

 

この青年に、もっと踏み込んで「異常」なことを「正常」だと教え込んだらどうなるだろうか。彼は、それも、「真実だ」とおもって受け入れるだろうか…。

満は、ゴクリと唾を飲み込んで、耕平の膝裏を掴んで、身体を半分に折り畳むようにした。

「あ……あ」

ペニスから手が離されたので、彼が名残惜しそうに掠れた声を上げる。それを訊きながら、満は胸ポケットからハンドクリームを出した。それは、いつも耕平の部屋を訪れるとき。なんとなく「今度こそ…」と思い胸ポケットに入れていたものだった。

そう、今日こそ。ついに使うときが来たのだ。

 

満はクリームを指に絞り出してから、その指を耕平の後孔に近づけた。

「あ……な…なに…」

突然ぬめった感触の指が、尻の穴に触れたせいで、彼の身体がビクンと大きく震えた。

「な……な……」

満は、耕平の顔を見ながら、ゆっくりとクリームのヌメリをかりて、指を後孔の中に差し入れていった。

「あ……いた……いたい……う…」

指一本を入れただけで、中がギチギチと指をきつく締め上げてきている。

満は、思っていた以上に、その中が狭い…と思った。それに、熱かった。彼の身体の内部に触れているような気がした。

「い……いたい……なに……なんで……」

「ほら、ここがどこだか分かりますか? ね」

耕平は、少しだけ指を曲げて、後孔の中で指をグルリと回した。

「ひ……ひぃ……あ……。う……うんち…うんちの穴」

耕平は途切れ途切れに言葉を紅い唇からもらしていた。

「い……いたい……そ……そんな場所……あ……あ…なんで…なに…」

耕平には、ただ強烈な際感があっただけで、満が指を入れている、という事実も認識できていないようだった。ただ、何かが体内に押し入ってくる違和感と、必死に戦おうとしているらしく、眉をよせて、「あ・あ」と息を荒く吐いていた。

満は、そんな様子をみていると、よりゾクゾクとした快感が背筋を這い上がってくるのを感じた。そう、この中にペニスを入れたらどうなるだろうか…。

「じゃあ、もっと滑りをよくするために、クリームを入れますね…」

満はそう囁いて、ハンドクリームのチューブの口を、後孔の粘膜と入れている指の間にぴったりと押しつけた。

「ひ……ひぃ……」

そうして、思い切りチューブを押しつぶす。

「あ……あぁ……き…気持わる……わるい……うぅ」

満は半分に折り畳まれているせいで、下半身が天を突いているような姿勢になっている耕平の後孔を見つめていた。異物に、真っ赤に充血した後孔の粘膜の中に、クリームが入っていっている。その感触は、入れている指でも感じることが出来た。ただ、チューブの中のクリームを全て入れて、チューブの口を後孔から外した瞬間。

後孔が激しく痙攣をして、ドロリと後孔内の体温で溶けたクリームが尻の割れ目から垂れ流れた。それが、蛍光灯の光を受けて、輝いているように見えた。

「あぁ、漏らしては駄目ですよ」

満はそう呟いて、空になったチューブを放り投げて。もう片方の指で、後孔から垂れ流れたクリームを後孔の中に押し戻すように指ですくって押し入れた。

「ひ……ひぃ……。き…きもちわる……い」

耕平は目を大きく見開いていたけれど。その黒目はにぶく濁っていて。焦点が合っていなかった。だから、きっとただ虚空を眺めているだけで、身体の全神経が後孔の感触に集中しているのだろう…ということが分かった。満はその耕平の目を見ながら、後孔の中にいれている指と、もう片方の手で、尻の双丘を左右に割り広げてみた。

「あ……あぁ」

尻の割れ目の奥に空気が触れる感触がたまらないのだろう。太股がヒクヒクと震えた。

ただ、そうして覗き込んでみると、入れられてる指をキュッと締めつけている後孔の襞が見えた。紅く充血していて、耕平が息をするたびに、少しだけヒクヒクと動いて、中に挿入されたクリームを少しずつ垂れ流してきている。

「きれいだ……」

満は、思わず呟いた。そう、キラキラと蛍光灯の光をクリームが反射して、輝いているように見えた。この奥を、もって見てみたい。

「あ……あぁ……い…イタイ……」

そう思って、満はゆっくりと、後孔の入り口に、双丘を割り広げていた指先で触れて。後孔を押し広げてみた。

「あ……う……」

後孔の奥は真っ赤で、ハンドクリームの白が、その中でマーブル状に色を付けているようだった。満は、じっとしばらくその中を覗いていたけれど。

「あ……いたい……いたい」

耕平のかすれた悲鳴と、後孔が激しく収縮したせいで、自分が随分と「見とれていた」という事に気付いた。

そう、ただ頭の中が真っ白になって、後孔の内部の様子にだけ精神が集中してしまっていた。あんなキレイな光景はみたことがない…。

あぁ、あの中をペニスで犯したら、どうなるだろうか…。満は頭に浮かんだ想像が、どうしても払拭できなかった。

そう、いきなり入れたりしたら、裂けてしまうかも知れない。後孔が裂けてしまったら…。

耕平はなんと言うだろうか。ただ、あの高い後孔の粘膜の中に鮮血が混じると…。

「あぁ……だめだ……我慢できない」

満はそう呟いて、自分の完全に勃起したペニスを、耕平の後孔の尻口に押し当てた。

「あ……あ……か…かたい」

突然触れた固いモノが、何なのか分からなかったのだろう。ただ、耕平は本能的に腰をずらして逃げようとしていた。しかし、後孔に指を入れているし、身体を半分に折り畳むようにして、尻を掴んでいる。耕平はせいぜい身体をよじる程度しか出来ていなかった。

「ひ……」

「あぁ……入れる…入れるよ」

だから、満は腰にグッと力を込めて、押し当てているペニスを押し入れようとした。ただ、最初はあまりにも後孔が狭いせいで、何度かズチュズチュと音をたててずれた。しかし、それが余計に「入れたい」という思いを助長させた。満の頭の中には、ただ後孔の紅い襞しか映っていなかった。だから、それが、「耕平の身体の一部だ」というよりも、ただそこにある「快感をもたらす穴」のように見えていた。

だから、2・3度ペニスが滑ったあとに、「今度こそは」と後孔の粘膜を指で強引に押し広げて、無理にペニスを挿入した。

「あ……あぁ……」

やっとペニスが後孔の中にはいる…。入っていく瞬間はきつかったけれど。先端を押し入れてしまうと、あとは楽だった。ズチュという音をたてながら、ピシピシと後孔の粘膜が引き裂かれていくのが分かった。そう、後孔がちょうど満のペニスにフィットするように。裂けていっている。

「あぁ……いい……いいよ……」

そのきつすぎるくらいの締め付けが、とても快感だった。満も、奥までペニスを押し込む間。ただ頭の中に極彩色がチカチカと点滅していて。ペニスからくる感覚に酔っていた。

「う……う……」

しかし、一旦最奥までペニスを入れて、ぴったりと下半身を密着させると、身体の下の耕平が目を見開いて歯をくいしばり、呻いている表情が目に飛び込んできた。

それは、まるで、パッとスポットライトが彼の顔に当てられたように。強烈に飛び込んできた。

平素の冷たく静かな彼の顔からは想像が出来ないくらいに、顔が歪んでギリギリと歯を食いしばっている。口の形が「いたい」という言葉にあいたけれど、声が出てくることはなかった。満は耕平の膝裏をつかんで床に押し当て、自分の上半身をあげてみた。そうすると、ちょうど結合部が見える。

真っ赤な粘膜が、満の赤黒いペニスを飲み込んでいた。しかし、その粘膜のあらゆる箇所から血が垂れ流れている。そうして、白い尻や、痛みのせいで萎えてしまっているペニスの方へと。紅い筋を作っていって居た。

「あぁ。キレイだ……。ほら、私のペニスが君のお尻の穴の中に入っているよ」

「い……い……いた……」

耕平はそう呻くと、一気に両目から涙が浮かび上がって、顔の横に垂れていった。

「あぁ、かわいそうに。肛門があちこちで裂けてしまっているね…。でも、ほら、おちんちんを弄ってあげよう…。そうしたら、少しはマシになるよ、ね」

満は、耕平のペニスを手で握りこんだ。後孔から溢れた血とハンドクリームのせいで、それは奇妙にベタベタとしていて、手がヌルヌルと滑った。しかし、満は最奥までペニスを入れたまま、耕平の性器が勃起してくるまで。執拗にペニスを弄った。最初はすっかり萎えて、全く反応を示しそうになかったけれど、ずっとクビレ部分を指の腹でこすったり。裏筋を爪で引っ掻くようにグリグリと刺激していく。

そうすると、「快感」に対して無知すぎるからだは、正直だった。だんだんとペニスも勃起してくる。それと同時に、後孔の奥も、ヒクヒクと痙攣してきていた。

だから満は、より執拗にペニスを掌の中でもてあそんだ。

そうしていると、ペニスがヒクヒクと締め付けられて満自身も快感が腰に溜まってくる。

「あ……あ……あぁ……」

耕平は、身体の中で綯い交ぜになっている「快感」と「痛み」にだけ翻弄されているようで。ヒクヒクと痙攣する喉から、時折掠れた声を絞り出しているようだった。

「ほら、みてごらん…。耕平さんのおちんちんも、こんなに勃起しているよ」

何度も何度も執拗に刺激したせいで、すっかり勃起している耕平のペニスを満は見せつけるように。彼の前髪をつかんで、顔を上げさせた。

「え……あ……な…なんで……」

彼は、勃起している自分のペニスが信じられないように、涙を溜めた目で何度も瞬きを繰りかえしていた。

「ね、気持がいいんでしょう。だから、こんなにもおちんちんが大きくなっている。

 そうだ…、また萎えてしまわないように、このまま止めておきましょう」

満はそう言うと、ポケットを探って、輪ゴムを取りだした。

資料をまとめるときとか、書類を丸めるときのために、輪ゴムと綴じ紐はいつもポケットの中に入れていた。

満は、普段だったらば仕事で使うはずの輪ゴムが、今、淫行のために使用されようとしている…。そのことに、胸がドキドキと高鳴った。

耕平のペニスは、根本を輪ゴムで縛られて、そこがくびれていた。それが満の目には、ひどく奇異に映った。まだ快感を知ったばかりのペニスが、こんな奇妙な形に変化している。

「ふふふ」

耕平の唇から自然と笑い声が漏れてしまっていた。それと同時に。

その光景を見ると、身体の奥から急激に快感が突き上げてきて。我慢がならなかった。

「あぁ、いい。いいですね。耕平さん…」

「ひ……ひ」

満は、彼の膝裏をつかんで、激しく腰を動かしはじめた。室内にグチュグチュと濡れた音と、皮膚のぶつかる「パンパン」という音が響いている。

「ひ……あ……」

耕平はただ口をあけて、焦点の合っていない目で虚空を見つめていた。

「へ……ヘン…へんになる……」

ただ、その唇から掠れた声が漏れた瞬間。満の中で一気に快感が弾けた。

「あ……で……出る……」

気が付くと、ペニスを耕平の後孔の最奥まで突き入れて、中に精液を放出していた。

ドクンドクンと精液が溢れていく。耕平にとっても、満にとっても。その時間が酷く長く感じた。満は、最後の一滴まで中に絞り出すように。びったりと身体を密着させたまま「あぁ……あぁ」と声を漏らしていた。

全身が痺れるような快感に包まれていた。それが、ひどく心地よかった。

 

「あ……あ……」

ゆっくりと、後孔からペニスを引き出す。

ハンドクリームと血とで濡れそぼっていて、蛍光灯の光を反射していた。その紅い血をみると、「ついに自分が耕平を犯した」という事実が身体の中にわき起こってきていて。

「あはは……ははは……」

愉快で溜まらない気がした。そう、ずっとこれを望んでいたんだ。自分はやっとやりとげた。

「はははは」

満の大きな笑い声だけが、部屋に響いていた。耕平は笑っている満の方を見ようとしていたけれど。後孔の奥に出された精液と、縛られているペニスのせいか。よどんだままの黒目を向けているだけだった。

「あぁ、耕平さん。あなたの中でイッてしまいましたよ。ね、お尻の中に精液が出される感じはどんな感じでしたか? 気持ちよかった? それとも、奥が熱かった?

満は耕平の頬を掌で撫でた。手に血が付いていたせいで、白い頬に赤い筋が出来ていた。

「あ……あ……き…きもち…わる……」

耕平はかろうじて、それだけの言葉を紡いでいた。しかし、輪ゴムで止められたペニスは勃起したままだった。

耕平は、自分の呼吸が整い、笑いが収まると、その勃起したペニスの方に顔を近づけた。

「ほら、耕平さん。見てくださいよ。おちんちんかこんなにも大きくなっている。ね。気持がいいでしょう」

「あ……あ」

満は、根本を縛られたままのペニスを指でつかんで刺激しはじめた。それは、確実に勃起して天をついている。しかし輪ゴムのせいで、精液を放出することは出来ない。

「あ……あ……なん…なんで……」

執拗に、何度も何度も根本から双球を揉み込んで、ペニスの先端まで指を這わせる。尿道口もグリグリと指で刺激する。そうしていると、耕平の太股が、「イク」瞬間のようにブルッと痙攣した。

「あ……で…でる……」

しかし、輪ゴムでしばられているせいで、実際にペニスの先端から精液が放出されることはなかった。

「あ……な…なんで……あぁ……あ……く…くるしい…」

本当だったら、ペニスの先端から出るはずの快感が、体中を駆けめぐって、苦しくて溜まらないのだろう。耕平は喉を反らせて、ぜいぜいと荒い呼吸を繰りかえしていた。

満が手の動きをとめないでいると、太股がブルブルと何度も痙攣をして、ペニスも縛られたまま。ビクンビクンと震えていた。

そう、そのたびに、彼の中で快感が放出されよう、と股間に集まる。でも輪ゴムでせき止められて、津波のように下半身から頭の先の方へと快感が押し寄せていって居るようだった。

「あ……あぁ……で…でる……うぅぅぅ」

満は、耕平の顔を見ていると、だんだんとその紅い顔から理性がはぎ取られていって居るようなのが分かってきていた。目と口を大きく開けて、「ひ・ひ」と呻いている姿は、まるで痴呆のようだった。ただ、それが満の目を満足させていた。

 

「ねぇ、精液を出したいでしょう。苦しくて溜まらないでしょう。解放させてあげましょうか?

満は耕平の耳に囁いた。

「あ……あ……う……うん」

耕平は、ガクガクと必死で首を縦に振っていた。顔が真っ赤で、汗で前髪が貼り付いていた。

満は、ポケットからスマホを取りだして、録音の機能のアプリを呼び出した。

「だったら、「なんでも私の言うとおりにする」と誓ってください。ね。言えるでしょう」

満は耕平の髪の毛をなで上げながら、その顔を見下ろしていた。耕平は、ただ、壊れた人形のように、首を縦に振るだけだった。

「う……うん………な…なんでも……言うとおり…に…する……あ…あ」

「じゃあ、「誓います」と言ってください、ね」

満はニヤニヤとしながら、スマホの画面上に波形がたって、言葉が録音されているのを確認していた。

「ち……誓う……誓います……あぁ」

「そう、偉いですね。きちんと言えて。さぁ、じゃあ、おちんちんの輪ゴムを解いてあげましょう」

満は、耕平のペニスを握って刺激しながら、ゆっくりと輪ゴムをほどいていった。

「あ……あ」

耕平の喘ぎ声を聞きながらの作業に、また興奮してくるような気がした。焦らすように時間をかけて、輪ゴムを外した。

「あ……あぁ」

その瞬間、耕平のペニスがビクンビクンと震えて、満の手の中で精液が放出された。

「で……出る……あ……あぁ」

耕平自身も止めることが出来ないのだろう。快感をせき止められて、随分と長い間、その尿道口から白濁とした液体が、ドピュドピュと漏れ続けていた。

「あ……あぁ…あぁぁぁ……」

耕平は口を大きく開けて、荒い息を、ひたすらに吐いていた。そう、今まで我慢して堪えていた物がようやっと解放されたのだ。

満はジッとペニスをみつめていた。身体を折り畳まれているせいで、耕平自身の腹の上に精液が垂れ流れていって湖のようにたまっている光景が、とてもキレイに見えた。それに、後孔がさけてジクジクと出続けている血がまじって、独得のマーブル状になっていた。

「きれいですね…あぁ、キレイだ…」

満はスマホを持ち直して、その様子を動画で撮影をした。ペニスから完全に精液が出終えて、ただ快感の名残で、耕平の太股がピクピクと痙攣する様子まで。そこまで撮影をしてから、満はようやく耕平から身体を離した。

「あ……あ」

折り畳まれていたからだが、ぐらりと揺れて、右半身を下にしたような横倒しになる。

シーツの上には血と精液の跡がしっかりと溜まっているのが見えた。満は、しばらく、横になって荒い息を吐き続けている耕平の髪の毛をなでてから。立ちあがって部屋を出て行った。

次のページへ
HOME
小説の目次へ