義弟

禁じられたことということほど、してみたくなるものだ。

たとえば、電車の中で、恋人との痴漢ごっことか。屋外での性交。それに、夜間の公園で、ひっそりと愛し合っている男女をこっそりと覗くことなど。

 

犯罪、とまではいかなくても、どこか「ばれてはいけない」という事にスリルを感じる。

 

でも、人間だったら、だれだって、少しはそういうスリルを味わいたい、という感情があるだろう…。ロミオとジュリエットだって、禁じられていなければ、あれほど深くは愛し合わなかったのかも知れない。

 

それに、おおむね、そういうスリルの裏には、どことなく「罪悪感」というものが張り付いていて。それが、余計に快感を刺激する。

特に、青姦などをする男女というのは、覗かれることを前提として、それも、興奮の要素に入れているに違いない。

 

ただ、私も、35歳を過ぎて、そういう機会も減ってきていた。

 

しかしながら、さすがに犯罪に手を染める気はない。

一流会社に勤務していて、将来有望。それに、私の秘めたる趣味を知らない彼女も居る。

恋人は、私の会社の専務の娘だった。

私には、将来の出世コースという名の道が、見えていた。

 

だけれども、最近はなかなかそういうスリルを味わえない事は、欲求不満だった。

 

何か、刺激的なこと…と、たえず、アンテナを張っていた。

 

だからこそ、そのチャンスは突然に訪れたのかも知れない。

 

ちょうど、盆だったので、田舎に帰省していた。

私の実家は、そこではなかなかに名が知れた旧家だった。戦前にはその郷、一番の大地主だったらしい。その名残で、自宅は白塀に覆われて、庭は凝った作りで、いつも庭師が手入れに来ていた。

いつも帰省をすると、両親が喜んで迎えてくれる。それに、敷地内に離れを造って、そこに妹夫婦を住まわせていた。

 

妹は短大をでて、すぐに結婚をした。相手は高校生時代からの交際相手だったらしく、婿養子として迎えていた。ゆくゆくは、妹夫婦が跡を継ぐことになっていた。

 

しかしながら、せっかく帰省したのに、妹は「友達の結婚式が大阪であるから」と留守にしていた。ついでに、旧友と大阪巡りをしてくるので、一週間ほど留守にする、ということであり、ちょうど、私とは入れ違いになってしまったようだった。

 

久しぶりに母が作ってくれた晩飯を終えて、縁側で夕涼みをしているときだった。

彼は控えめに、私の傍によってきて、板張りの上に正座をした。

妹の夫は、私が帰省しているのに、妹が「留守」にしていることがとても気がかりなようだった。

「どうもすみません。せっかくお義兄さんが帰ってきてくれているのに。

花里奈には、僕も「お義兄さんが来るのだから、早くに帰るように」と言ったんですけれど…」

妹の夫は、我が儘放題にそだった妹の花里奈をもてあましているようだった。

 

私が「かまわないよ。花里奈とは別にいつでも会えるんだしね」と言うと、彼は安心したように、息を吐いていた。

そこで、私は、「妹の旦那」というのを、はじめてまじまじと見たような気がした。

 

いつもは、私が帰省していても、彼との間には花里奈という存在がいる。

彼は、花里奈にかくれるように、身を小さくして、私にお酌をする程度だった。だから、いままであまりじっくりと見たことがなかったけれど。

 

こうして、対峙していると、彼は線が細く、華奢で、まるで女のようだった。

花里奈は、肉付きがよく、豊満で、「女」のニオイをぷんぷんとさせているほうだった。だから、余計に、この「妹婿」の存在が、私の頭の中では薄らいでいるのかも知れなかった。

 

それに、いままで、こうして2人きりで話したことなどなかった。

 

私は、あらためて「彼」を見て、眼を細めた。なんという名前だっただろうか…。

私は、自分の心の中で、奇妙な興味がムクムクと頭をもたげてきているのを感じた。

「花里奈は我が儘だからね…。君も、手を焼いて居るだろう…」

私は団扇を緩慢に扇いでいた。田舎の夏は涼しい。

都会の夏に馴れてしまっている私には、田舎の「夏」はなんだかシンとし過ぎていて、奇妙なものを秘めてたたずんでいるように感じた。

「はぁ……」

彼は返答に困るように、首をすくめて、スッと私から視線をそらせた。

そのまなじりが、ふと、私の眼にやきついた。それは、色っぽい女の、快感をうったえる時の、視線の流れに似ていた。

 

「そうだね……。せっかく花里奈も居ないんだし。

今日は、君たちの「離れ」の方に泊めて貰おうかな」

義弟は、一瞬、私の言葉に戸惑っていたようだったが、義兄の気持ちを損ねてはいけない、と思ったのだろう。

それに、彼は断るほどの気の強さも持ち合わせていないようだった。

「はぁ…それはもちろん。歓迎ですが、なんといっても、何もないですが…」

「いや、そういえば、私は花里奈の家を見たことがなかったなぁ…と思ってね。

 それに、たまには気分替えしてみたい」

彼は、私の言葉にいちいち頷き、「本当に、何もないですが…」と繰りかえしていた。

「じゃあ、「君たちの家」で晩酌でもしようか…」

私が立ち上がると、彼も私のあとにならってスッと立ち上がった。

改めて見ると、私よりも随分と背が低い。肩などは本当に華奢で、まるで、まだ発育途中の高校生のようだった。これならば、花里奈の方が、彼よりも肩幅もひろいのではないのだろうか…と思った。

 

彼は、田舎の暗闇の中を、馴れた感じでひょこひょこと離れの方へと歩いていった。

私は、その離れの表札で、彼の名が「森山 蓮」だということを知った。

 

離れとはいっても、3LDK程の平屋建てで、実家とは充分に距離があり、それだけでも、一軒家としてなりたちそうだった。ただ、実家と違うのは、室内が、花里奈好みのインテリアとなっていて、なかば西洋かぶれのようになっていた。

「ふぅん…。蓮くんたちの家に来るのは初めてだね…」

私は、西洋風のソファに腰を落とした。義弟はカウンター式の、新しいシステムキッチンに立ち、冷蔵庫から日本酒を取り出していた。

おつまみには、ドライフルーツや、甘そうな焼き菓子を用意していた。これは、花里奈の趣味だな…と思った。

「蓮くんも一緒に飲もう」

ソファの前にあるテーブルの上にそれらを置くと、彼は床の上に正座をし「僕は、お酒は苦手なので……」と口ごもった。

義弟が、「飲めない口」だというのは、花里奈から聞いたことがあった。

「だから、つまらない人なのよ。趣味もないし、お酒も一緒に飲めないし。食は細いから、食べに行ってもつまらないし」と愚痴っていた花里奈の言葉が頭の中に浮かんでくる。私は、身を小さくして、座っている彼が、なんだか小動物のように思えた。

 

それが、余計に私の興味をあおった。

「いいじゃないか。たまには花里奈も居ないんだし。男同士、思う存分酔おう」

私は、彼の腕をつかんで、ソファの上に並んで座るように引き上げた。

彼の腕は、想像していたよりも、ずっと細かった。

 

この夏でも、長袖のTシャツを着ているのは、きっと、その細い腕をさらすのが嫌だからに違いない。

 

「いえ……お義兄さん。本当に、僕はお酒は……」

「遠慮はいらないよ。そぁ、ほら、ググッといってごらん」

私は、彼になみなみと日本酒が注がれているグラスのコップを持たせた。

「一合くらい、どうっていうことないだろう。

蓮くんも、付き合いでのむことくらいはあるだろう。せっかく2人きりなんだ。さぁ、飲んでごらん」

グラスをもって、まごまごとしていた彼の手をつかみ、無理矢理口元に押しつけた。

彼は、やむを得ないように、眉をしかめながら、グラスに口をつけた。

私は、そのグラスの底を持ち、強引に彼の方へ。傾けた。

「う……うぅ……」

彼はすこしくるしそうに呻きながら、私の手からも逃げることが出来ず。

やむを得ず、口の中に注ぎ込まれていく透明な日本酒を嚥下した。

 

ゴクンと、のど仏が動いた様子が、私の目には新鮮に見えた。

 

「ほら、飲んでみると旨いだろう。

蓮くんも、なかなかいい飲みっぷりじゃないか。

 さぁ、ほら、もっと飲んでごらん」

「い……いえ……」

辞退しようとする彼のコップに、再び日本酒を注いだ。

彼はどうしようか躊躇して、テーブルの上にグラスを置きたそうにしていたが。

私は、彼の手の上から、グラスを握りこむようにして、また、口元に近づけていった。

 

彼は顔を引いて抵抗しようとしたけれど。義兄にたいする遠慮があって、はっきりとした抵抗をしめすことができなかった。

 

グラスごとにぎった彼の指は、細かった。

今まで、自分が性交を持ってきた女達よりも、細いように感じた。

 

しかし、それが、また、私の欲望をふくらませた。

彼の頭をグラスに押さえつけるようにして、2杯目も飲み干させた。

 

彼の顔は、みるみる赤くなっていった。

「お義兄さん…。もう…僕は…本当に酒は苦手で……」

「いやいや。日本酒が苦手なのかい? だったらビールなんかはどうだい?

 花里奈のことだから、ビールもあるだろう」

私は立ち上がって、キッチンに行き、冷蔵庫をあけた。

 

よその家の冷蔵庫をあけるというのは失礼な気もしたけれど。妹の家だ、とおもうと、遠慮する気も遠のいた。

案の定、冷蔵庫の中には、ビールと缶入りのカクテルなどが入っていた。

 

「あぁ、カクテルだったら甘いから、グイッといけるかもね」

私はビールとカクテルをとりだして、テーブルの上に並べた。

彼の顔は、さっきよりも赤くなっていた。

酒に弱い、というのは、あながち、ただの「遠慮言葉」ではなかったらしい。

「さぁ、これだったら、甘いし口当たりもいいよ」

私は、カシスオレンジの缶の蓋をあけた。

キラキラと薄いピンクに輝くカクテルを、グラス一杯に注いだ。

「さぁ、口直しに、いってごらん」

「あぁ…本当に…気分が…」

彼は頭を押さえていた。その手に、無理矢理グラスを掴ませて、口に運ばせた。でも、口当たりの良いカクテルは、日本酒よりも飲むのが楽だったらしい。

先ほどよりは勢いよく、彼は喉の奥に液体を流し込んでいった。

2杯・3杯と。無理矢理にグラスに注いでは口に運ばせた。

杯を重ねるごとに、彼の手からは力が抜けて、その作業が容易になっていった。

 

何杯も酒をちゃんぽんしているせいで、もう、彼はぐったりとしていた。

顔を赤らめて、しどけなくソファにもたれかかる彼の姿は、たまらなく魅力的に見えた。

 

何よりも、「妹の夫」だということが、私の官能を刺激した。

 

彼は、このほそい両手で、肉感的な花里奈を抱いているのだ。

その光景を想像すると、どちらかというと、彼が花里奈にしがみついているように思えた。

「あぁ、もう、そんなに酔ったのかい? ベルトが窮屈だろう」

私は、彼のベルトに手をかけて、ゆっくりと外した。そうして、ズボンのボタンとファスナーも下ろした。

中からはボクサータイプのグレーのブリーフが見えていた。

 

このことに、私はドキンと胸が高鳴った。

「さぁ、窮屈だろう。脱がせてあげよう」

「あぁ……だめですよ…。お義兄さんにそんなこと……」

彼はほとんど呂律の回らない言葉で、呟いたけれど。

酒のせいで、身体がだらんとなっていて、私の手をとめようとする掌には、まったく力が入っていなかった。

瞳をみると、先ほどまでの理知的で遠慮がちに揺れていた眼が嘘のように。くすんで、焦点が合っていなかった。

その酩酊している様子が、また、私の欲望をあおった。

 

まるで、くずれたあやつり人形でも抱いているように。

彼の身体は私にされるがままだった。

「いけないね。蓮くん。これくらいの酒で、そんなにも酔っていちゃあ…」

「だって…お義兄さんが……のめって……」

私は、手際よく、彼のシャツも脱がせた。彼は、ボクサーパンツ一枚で、ソファの上に半分倒れるようにして座っていた。彼の白い肌が広がっている胸と、西洋風のソファの濃厚な柄とのコントラストがよかった。彼の身体が、浮き上がっているように見える。

「私のせいにするのかい? 結局、のんだのは君だろう」

「す…すみま…せん。……そうですけど……あぁ……暑いな…」

彼はボウッとしているようだった。

私は、グラスに、今度はビールを注いで、彼の口元に持っていった。

「ほら、気付けの一杯だよ。これも飲んでごらん」

「あぁ……はい……」

彼の頭を支えて、唇にグラスを押し当てた。

透明なグラスに、べったりと彼の赤い唇が押し当てられているのが一瞬見えた。

しかし、すぐに、彼の喉奥にながれていくビールで見えなくなった。

「あぁ……ぐらぐらする…」

彼は唇のはしから泡だったビールをもらしていた。それが、一筋、白い首を通って、喉もとから鎖骨のへと流れていった。

グッとグラスを傾けると、その流れがより濃厚になり、胸元の乳首の方にまで跡を残すようにしながら流れていった。

ピンク色の乳首も。私の目には新鮮だった。

「ビールも旨いだろう。こんなにも美味い物を飲まずにいるなんて、勿体ないよ」

私は、彼の口からグラスを外し、缶にのこったビールをグイッとあおった。

「あぁ……なんだか…頭がグラグラする……」

彼は、唇をグイと腕で拭いた。そのまま、横になって、寝ようとしかかったので、私はあわてて彼の頬を叩いた。

「寝てはいけないよ。そうだな…。酔い覚ましになることを教えてあげよう」

「えぇ……あれ……僕の服がないなぁ…」

彼は、自分の胸元のシャツをたぐり寄せようとして、はじめて自分がパンツ一枚なのに気付いたようだった。

「どうしてかなぁ…」

「窮屈そうだったから、脱がせてあげたんだよ」

私が言うと、彼は自分の裸体を見下ろしながら「それは……ありがとうござい…ます」とあまり明瞭でない言葉で、ぺこりとお辞儀をした。

 

「さぁ、じゃあ、酔い覚ましになることをしようか……」

彼は完全に酩酊していて、眼にも、何も映っていないようだった。

 

普段から全く飲んでいない人間が、日本酒を五合と、カクテルの缶を四缶・ビール缶を一缶開けたのだ。彼の身体の中のアルコールは許容範囲を超えて、頭の中をグルグルと蔓延し、正常な神経をぶちぶちと断絶していっていた。

盲人のように、手をソファに這わせたり、自分の身体をさわったりして、感覚を確かめているようだった。

「ほら、座ってごらん…」

 

彼の肩をつかんで、ソファからおろし、床に膝をつかせた。酔いのせいで、身体はグニャグニャとまがっていたけれど、全身に力がはいっていないので、その行為は容易にできた。

彼は、身体を、私の右足にもたれ掛けさせるようにして、ちょうど、ソファに座った私の足の間の床に腰を落としていた。

「じゃあ、酔い覚ましに…これでも舐めてみるかい?

 

私は、その顔を見ながら、自分のズボンのファスナーを下ろして、ペニスを取り出した。

彼の様子に、私も若干興奮しているらしく、半分ほど屹立していた。

私は、右足に、彼の身体の重みを感じた。

彼は、ぼんやりとした目で、私のペニスを見つめていた。いや、ただ、目を開けていたに過ぎないかも知れない。

酔いのせいで、瞳は焦点が合っていなかった。

「ほら、これを口にいれて舐めるんだよ」

 

誰も見ていない。2人だけの空間、というのが、私の行動を助長させた。

私は、彼の頭を掴んで、口を指でこじあけ、その中に、強引にペニスをねじり混んだ。

酔いのせいもあって、彼は私にされるがままに、性器を口に含んでいった。

「うぅぅ……ぐぅぅ……」

喉奥まで押し入れると、彼の顔が苦しそうに眉をひそめた。

その表情の変化が、みていてたのしかった。

 

酔いのせいで、うすぼんやりとしていた顔が、ジワリジワリと苦しそうにゆがめられていく。彼は、自分が口に含んでいる物が、何か分かって居るんだろうか…。

それとも、酔いのせいでぼんやりとした瞳は、何も分かっていないのだろうか。

 

私は彼の髪の毛を掴んで、角度を変えたり、ギリギリまで引き出しては、また、奥まで突き入れたりした。

「うぐぐ……」

喉奥まで差し入れると、彼は苦しそうに喉を鳴らした。それが、また、よかった。

 

喉奥・食道の入り口が、苦しさでビクビクと震えているのが、ペニスの先端に伝わってくる。

彼の身体が華奢なせいで、私の思うがままに頭を動かすことが出来た。時折、歯があたるのが難点だったが、「妹の旦那」が、こうして、自分のペニスをくわえている…と考えると、快感は増していった。

 

「うぅぅ……」

くるしそうにしている彼の口腔の壁に先端を擦りつけたり。

ギリギリまで引き出しては、先端のくびれを彼の唇が吸う感覚を楽しんだり。

 

そうしているうちに、私のペニスも完全に屹立した。

心地よい快感が、私の身体にひろがっていくのが分かった。

「さぁ、もういいよ」

私は、彼の口からペニスを引き抜いた。

 

それは、彼の唾液でぬれそぼっていて、悪趣味なヨーロッパ風なシャンデリアの下で、テラテラと光っていた。

ペニスを引き抜くと、彼はしばらくぼうっとしたように、私のペニスを見つめていた。

「いま、何をなめていたのか分かるかい?

私は、彼の顎をもって、顔を上向かせた。酔いのせいで、どんよりと曇った瞳と眼があった。

「あぁ……くるしかっ……た……」

彼の言葉は、ぼんやりと濁っていて、よくきかないと、ただ、ブツブツと口の中で言っているだけのように聞こえた。

「君は、私のオチンチンを舐めたんだよ。おいしかっただろう。

 さぁ、「オチンチン、おいしかったです」って言ってごらん」

彼は、私の言葉を聞いて、じぃっと目の前の私のペニスを見ていた。

「お……オチンチン……」

口の中で、確認するように繰りかえして、それから、私の屹立したペニスをじぃっとながめた。

そこで、はじめて、私の言葉の意味が分かったらしい。

「えぇ……あぁ……そんな…。

 僕が…お義兄さんのおちんちんを……」

あせって、後ずさりをしたかったようだけれど、身体に力がはいらないので、ぐにゃりと身体をゆがませる事しかできていなかった。

「そうだよ。さっきまでおいしそうにくわえていただろう。さぁ、じゃあ、今度は舌で舐めて貰おうかな」

私は、彼の前髪をつかんで、頬にペニスをすりつけた。

先走りの液が、彼の頬にべったりとはりつく。

 

白い頬に、幾筋もべったりと粘液がふちゃくしていくのが、みていて愉快だった。

白地のキャンパスに、無作為にペンキを投げつけるように。

彼の顔も、どんどんと、汗と私のペニスからでる粘液で汚れていく。

 

「あぁ……お…お義兄さんの…オチンチンが……

 す……すごい…こんな…」

彼は、屹立した他人の男性器をみるのが初めてだったのかも知れない。

うわずったような言葉を繰りかえしていたけれど、眼を逸らすことが出来ないように、じぃっと私のペニスをみていた。

その瞳には、すこし、後ろめたい興味心のようなものが映っていた。

 

「そうだよ。君が舐めるから、こんなになったよ。ほら、今度は舌をだして舐めてごらん」

私の言葉に、彼は赤い舌をベロンと出した。

 

彼の唇からでてきた舌は、まるで軟体動物のようだった。彼の口の中に、別な生き物が住んでいて、それが唇から出てきているようにも見えた。

 

その薄気味悪さが、ひどく淫猥な気がして、私はより興奮をおぼえた。

「あぁ…僕、お義兄さんのおちんちん……なめてる…」

彼の声は、酔いのせいで、子供の声のようにうわずっていた。

そうして、ペロペロキャンディーでも舐めるように、私のペニスにじっとりと舌を這わせていった。

 

彼自身も、その行為に興奮してきているらしい。

床に膝をついて、パンツ一枚になっている彼の身体全体が、赤くなっていた。

 

私は、じっくりと彼の舌を堪能してから、彼の腕をつかんで、ソファの上に引き上げた。

西洋風のソファの上に横たえらせると、より、彼の身体が、華奢なことが。よりきわだった。

 

「なんだい? 私のオチンチンをなめて、君も興奮したのかい? パンツが窮屈そうだね」

私は、彼のグレーのボクサーパンツを引っ張って、足から引き抜いた。

完全に全裸になると、特に、彼の股間周辺の肌が薄く、白いのが眼に眩しかった。

 

その中央で、やや色をかえて、半分くらい勃っているペニスが、とてもかわいらしかった。

 

「あぁ、君も半勃ちになっているね。私のオチンチンをなめて、おいしかったのかい?

「………ち…ちが……」

彼は舌がもつれて、うまく言葉を紡ぐことが出来ないようだった。それに、私から顔を逸らすように、よどんだ視線を左右にゆらゆらと揺らしていた。

「かわいいペニスだね」

私は、彼のペニスを握って、数度、根本から絞り上げるようにしごいた。

 

しかし、私の予想に反して、それだけで、彼のペニスは硬くなった。

「あ……あぁ……あぁぁぁ……」

彼の口からは、あえぎ声がもれて、まるで、初めて快感に目覚めた処女のようで。

私は、意外な違和感を感じながら、ぎゅうっとペニスをにぎったり、先端の尿道口を指の腹で弄ったりした。

「あぁ……うぅぅ……お……おにい…さん…」

彼は、何か言葉を紡ぎたかったようだけれど、ペニスの刺激のせいで、あえぎ声を上げることしかできていないようだった。

彼の、鋭敏すぎる反応は、目新しく、私は眼を細めた。

 

妹の花里奈は肉付きがよく、豊満で、貪欲なイメージがあった。

さぞかし、夜の方も、欲望に忠実で、その肉感的な身体を駆使して、欲望を貪っているだろう…と思えた。

私は、そういう点に、妹と自分の、姉弟としての共通点を、なんとなく感じていた。

 

だから、当然に、彼も快感には馴れている物だと思っていた。

 

花里奈が、さぞかし、彼の身体をむさぼっているだろう。そう、想像していたのだ。

 

でも、目の前の義弟は、私の少しの指の動きで、鋭敏に身体を震わせている。

まるで、全く快感をしらない者のようで。

 

私には新鮮だったが、それは、あの「花里奈の夫」というのには意外な気がした。

 

「あぁ……もう……ひ……」

私が数度ペニスをこすっただけで、彼の身体はおおきく震えて、ペニスの先端から白濁とした液体を吐き出した。

「なんだい? もうイッたのかい?

私は自分の掌にべっとりとついた、彼の精液を見つめた。

「あぁ……だ……だって……お義兄さん…が…。

 僕のオチンチンを…擦るから…」

 

彼はしどろもどろな言葉を、口の中で呟いていた。

「でも、こんなちょっとオチンチンをいじったくらいでイッていたんじゃあ、花里奈に馬鹿にされるだろう。ほんの少ししかオチンチンを触っていないよ」

私は、精液で濡れた手を、彼に見せつけるようにした。彼は、ぼんやりと見ていたけれど、「花里奈」という言葉に、一瞬、ピクンと肩をふるわせた。

そうして、視線をそらし、くやしそうな、恥ずかしそうな。微妙な表情をして、唇をキュッと噛んだ。

 

私は、最初、どうして彼がそんな表情をするのか分からなかったけれど、彼の恥じているような顔から、なんとなく想像が膨らんだ。

「ああ…もしかして、君、花里奈とはこういう事をしていないんじゃないのかな?

 花里奈に、君では役不足なんじゃないかな…。オチンチンも小さいしね」

私は、彼のぐにゃりと柔らかくなったペニスを指でいじった。

彼は羞恥と快感で、顔を真っ赤にしていた。それに、酔いもあり、頬はもとの白い肌を忘れさせるくらいに紅潮していた。

「………お……お義兄さん…ど…どうして…」

その言葉の後には「分かったんですか? 」という言葉がつづくだろう…ということは容易に想像できた。

 

「花里奈は、見た目通り。どう見ても性的に貪欲だろう。いや、それに、私と兄妹だ。

 とても、花里奈が君だけで満足しているとは思えないな。

せいぜい、気まぐれに君をいじって、愉しんでいる程度かな。

いや…。もう結婚してかなりたつんだね。君をいじることもないんじゃないかな…」

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