小説家の日常
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ピンポーンと部屋のベルが鳴って。

パソコンの画面から、目を離した。

 

ずっと、集中して書いていたから、目がショボショボしている。でも、もっと、もっと書かないと。

自分は、まだまだ駆け出しで、誰も知らないような物書きなんだから……。

「……はい…」

恵山彗は立ち上がって、ドアに向かった。

四畳半のせまい市営住宅だから、数歩、身体を動かすだけでいい。

楽といえば楽なんだけれど。32歳。自分は、生涯、こんな場所で暮らすのかと思うと。

「あ……ど…どうも…」

ガチャリと音をたてて、ドアを開けた。

「こんにちは。恵山さん」

見慣れた男が立っている。

「えと……さ……佐藤さん……どうして…」

自分の担当の編集者だ。

ただ、今まで、家になんて来たことはない。

恵山は、まだまだ駆け出しで、つい先日、小さな賞をとって、デビューしたばかりだ。

編集が家に来てくれるほどの作家じゃない。

仕事といわれれは、いつも出版社まで出向いていって。だから、自分担当の編集の佐藤とも。会社でしか会ったことがない。

 

それが、わざわざ家にまで来ただなんて。

「あ…と。締め切り……まで、まだ9日…あ…ありますよね…」

嫌な想像ばかりが頭に浮かんできて。

 

勝手に焦ってしまう。

 

もしかして、もう、仕事しなくていい、と言われるんじゃないだろうか。

佐藤さんが来ると分かっていれば、もっとまともな格好をしていたのに。

佐藤はいつもと同じ。スーツを着ている。

上下ジャージの自分が、情けなく感じる。

「えぇ。突然来てしまってすみません。でも、どうしても、と言われたモノで」

「は……はぁ…。すみません。こんな格好で。い…今、ちょうど、書いていたところで」

佐藤は、恵山の言っていることなんてどうでも良さそうに、少しだけ開けていた扉を、ズイと押し開けた。

「え……」

佐藤の隣に、見たことがない人間が立っている。

誰か、連れてきていたのか。自分の生活がばれるのが恥ずかしくて。少ししかドアを開けていなかったから、気づかなかった。

 

佐藤よりも、背が高くて。がっしりとしている。自分よりも年下だろうか。ただ、スーツじゃなくて、カッターシャツにチノパンみたいなズボンを履いている。

 

「あ……こ……こんにちは」

慌てて、その男に頭を下げた。

「恵山さん。こちら、デザイナーの唯 蓮翔さん。名前くらいは聞いたことあるんじゃないかな」

「どうも、初めまして。唯です」

「は……初めまして。え……恵山です」

名前くらいは聞いたことがあるんじゃないかな…という事は、有名人なのだろうか。自分は、今まで小説を書くのに必死で。あまり世の中の事は知らないから。

就職しても、いつも、すぐに解雇されてばかりだし。

自分は、世間からは爪弾きにされている人間だから。

 

唯は、堂々としている雰囲気だし。佐藤が気を遣っているような雰囲気から。すごく偉い人なのかもしれない。

「本当だったら、恵山さんが会えるような人じゃないんだけど……。

あぁ、それより、失礼しますよ」

「あ……す…すみません…。どうぞ…」

佐藤が、ドアを開けて、部屋の中に入ってきた。

靴を乱雑に脱いで、ズカズカと室内に上がってくる。本当だったら、自分から「上がってください」って言うべきだったんだろうか。でも、室内は、誰も来たことがないから。

散らかっているし。

人を入れられるような部屋じゃない。

「どうぞ、どうぞ。唯さんも上がってください。ね、恵山さん」

「じゃあ、失礼して」

「あ……は…はぁ……」

自分の部屋なんだけど。男2人が、勝手に部屋に上がっていく。

慌てて、ドアを閉めて、自分も室内に入った。

佐藤が、乱雑に散らかっていた畳の上に、どっかりと座る。

唯も、佐藤に続いて、畳の上にあぐらを組んだ。

男2人が座ると、それだけで部屋がいっぱいになってしまう。

「こちらの唯さん、電通出身で、有名なアーティストのCDジャケットとか、有名作家さんの表紙なんかを手がけている人なんですよ」

「は……はぁ……」

恵山は、ウロウロと立ったまま、頭を下げた。

どうして、そんな有名な人が、自分の家に来ているのか分からない。

「先日、恵山さんの写真がウチの雑誌に載ったでしょう」

「は……はぁ……」

先月号の雑誌に、自分の小説がちょっとだけ載せてもらえた。そのときに、作者として、小さな顔写真が掲載されたのを覚えている。

「その写真を見て、唯さんが、恵山さんに会いたいって言っていらして…」

「は……はぁ……」

唯の方をチラと見た。

目が合った。

「あ、やっぱり……」

「は?

突然、唯が立ち上がった。

「やっぱり、恵山先生だ」

「は?

唯のがっしりとした手が、両肩を掴んできた。

「恵山先生でしょう。覚えていないかな。僕が高校生の時に、教育実習で来てたでしょう?

「は……はぁ……」

 

教育実習。そういえば、大学生の時に、教員免許をとるので、教育実習に行ったことがあったけれど。あまりいい思い出がない。

背が低くて小柄なせいで、学生からは馬鹿にされて。

授業中も、まともに授業を聞いてもらえなくて。

「懐かしいなぁ……。恵山先生、全然変わっていないですね」

唯が、前髪をなで上げてきた。

 

先生、なんて言われるのは違和感がある。

むず痒いような…。

「僕は、恵山先生の事、わすれたことがないですよ。先生、小さくて可愛くて。

 あんまりにもカワイイから、みんなでよく虐めていましたよね」

「は……はぁ……」

自分が覚えている記憶とは、ずいぶん違うみたいだけれど。

両肩を掴んでいる手が痛いくらいで。曖昧にうなずいてみた。

「唯先生、じゃあ、こちらの恵山でいいんですか?

佐藤も立ち上がった。

「もちろん。懐かしいなぁ。いやぁ、恵山先生、相変わらずかわいい…」

「あぁ、よかった。本当に、よかった。

 じゃあ、唯先生、本当に、こちらの恵山でいいんですよね?

「もちろん、言っていたとおりの人です」

佐藤と唯が、勝手に2人で話している。

2人に挟まれると、何とも言えない威圧感を感じる。

自分の家なのに。

2人が勝手に話をすすめていて、よく分からない。

「よかった。

 じゃあ、唯先生、お願いしていたお仕事は……」

「もちろん、お受けしますよ。それに、恵山先生の本の方も…、ぜひ、任せてください」

「いやぁ、唯先生。本当にありがとうございます。

 ……じゃあ、私は……帰った方がいいですかね?

佐藤が、唯の方を伺うように首をかしげた。

 

話が全然見えない。

ただ、唯だけが、自分を懐かしんで居るみたいで。

 

自分としては、教育実習に、そんなにもいい思い出はないんだけれど。

「いえいえ、佐藤さんのおかげですから。ご一緒に…」

「そうですか? じゃあ…お手伝いいたしましょうか?

「え?

佐藤の方を見上げてみた。

 

同時に、佐藤の持っていた鞄が、ガンッと頭にあたる。

「ひ……」

クラッと視界が揺れた。

 

よく…意味が分からない。

自分の身に、何が起きたのか…。

ただ、頭が痛くて。立っていられなくて、しゃがんだ。

「い……いた……」

「いやあ…本当に相変わらずだ。先生、覚えていますか?

僕はわすれたこと、無いですよ」

「ひ……」

両手首が。唯の手で掴まれた。

何を言っているのか分からない。教育実習の時の事だろうか……。

古くて、嫌な記憶は封印してしまっている。

「あのときは若くて、ただ、先生を虐めたくて。今考えると、ずいぶんと無茶をしてしまって、すみませんでした。今は、もう、あんな無茶はしませんよ」

「え……あ……あの……」

唯の顔が迫ってきていて怖い。

教育実習の時…。

記憶をたどろうとおもうけれど。

「あ……あの……」

「唯先生、どうぞ」

佐藤が、ネクタイを外して、唯の方に差しだしてきた。

「あぁ、佐藤さん、どうも」

唯が受け取ったネクタイで、掴んだ両手首をまとめて縛り上げていく。

「ち……ちょっ……」

どうして、こんな事をするのか。

全然話が見えない。

 

ただ、両手の自由がきかなくなると、なんともいえない恐怖感が背筋を這い上がってくる。

さっき殴られた頭が、まだクラクラしていて。

まともに考えることが出来ない。

 

一体、何がおこって居るんだ…。

「ひ……」

佐藤が、乱暴に足をはらった。

ゴンッと音がして。

身体がグラリと揺れて、机の角で頭を打ってしまった。

「い……いた……い……」

散らかっている畳の上に、完全に身体が倒されてしまっている。

「佐藤さん…。もう少し丁寧に…。ねぇ、恵山先生…」

唯が、畳に膝をついて、頭をごつい手で撫でてきている。

「……すみません…」

ユラリと揺れて、視界から佐藤が消えた。

見えない下半身側で、佐藤も畳の上に膝をついているみたいだ。

倒れている身体が、頭側は唯。下半身側は佐藤に挟まれている。

どうして、こんな事になっているんだろう。

「ひ……」

グイッとジャージのズボンとパンツが。

引っ張られて、一気に引きずり押された。

「な……なにを……」

ひやっとした空気が、下半身に触れてくる。

 

訳が分からない。

身体を慌てて起こそうとするけれど。

「い…いた……」

唯に頭を畳におしつけられた。

「あぁ……先生、懐かしいなぁ」

「な……なに……。な……なんで……」

きっと、下半身が剥き出しにされている。

どうして、そんなことをされているのか分からない。

 

ただ、性器も尻も。ひんむかれて、剥き出しにされているんだ…と思うと。

怖い。

一体、何をされるのか。

訳の分からない恐怖が、ゾゾゾッと身体中に広がっていく。

 

「ふふ…。ちんちんも縮み上がっていますよ」

「や……な…なんで……」

ちぢこまっているペニスに。唯の指が触れてきた。

「かわいい……かわいいですよ…」

グイグイと、ペニスが指でしごかれている。

 

他人の手で、ペニスが弄られることなんて。想像したこともなかった。

しかも、こんな男達に…。

 

「や……やめ……。き……きた……汚いですよ……」

腰をひこうと思うけれど。佐藤の手が、腰をがっちりと掴んでいて、動かすことが出来ない。

「相変わらず。先生、何をされるか、分かっていないんですね」

唯がクスクスと笑っている。気持ち悪い。

なんだか、得体が知れない感じがして。

「かわいいな……。

あぁ……我慢できないですよ……」

「ひ……」

視界の隅で。唯がカチャカチャと音をたてて、ベルトをはずしている。

何をしようとしているのか…。

 

「え……な……なんで……」

ズイと唯がチノパンをずらした。

 

すると、ニョキッと。屹立したペニスが。ズボンの下から現れた。

 

「ほら…先生がかわいいから…こんなになってしまって。

 あぁ……本当に、我慢できない。いいですか?

性的に興奮したときに、ペニスが勃つのは分かっている。

 

でも、どうして唯のペニスが、そんなことになっているのか。分からない。

今は、そんな場面じゃないだろう…と言いたい。

唯が言っている「かわいい」という言葉の意味が。理解できない。

 

「ひ……」

「あぁ……ほら…。先生のケツの穴。

 ……小さいなぁ…」

「い……ひ……いた……」

ピリッとした激痛が走った。

痛みの原因が。

唯の指が、尻の穴の中に入ってきて居るんだ…と分かるまで、数秒かかった。

だって、想像した事も無かったから。そんなこと。

「い………い……いたい……い」

ヒリヒリとする痛みが。どんどんと広がっていく。

「入るかな……ほら…」

「え……な……」

視界に、突然自分の足が入ってきた。

仰向けに固定されて、身体が折り畳まれている。

その身体の上に、唯のおおきな体が被さってきている。

その意味を。頭が一瞬理解しかけたけれど。

すぐに考えが散った。

「ひ………ひぃぃぃ……い……」

「あぁ……狭い……きつ……」

声も上げられないくらいの痛みが。

 

下半身がズンズンッと迫ってきたから。

身体が、尻の穴から2つに引き裂かれている。

 

「あ……あ……」

呼吸をするのも苦しくて。

全身から、ぶあっと汗がにじみ出る。

痛い…。

痛いなんて言う感触を通り越して。

 

「ひ……う……」

「きついな……あぁ……やっぱり……」

それでも、どんどんと痛みが身体に滲んでいくように、広がっていく。

 

ツブ…と頭の中で何かがはじけるみたいな感触がして。

「う……あ……」

「切れた。ほら……血が…。

 でも、楽になった……」

唯が、目の前に指を突きつけてきた。

指先に、血がべっとりと付いている。

「ほら。先生、分かりますか? 僕のチンチンが、先生のケツの穴に入って居るんですよ」

「ひ……」

覆い被さっている唯の身体が揺れると。

勝手に、自分の身体まで揺れてしまう。

 

想像したくなかったけれど。

 

「気持ちいいな…先生のケツの穴、きついですよ……

 ほら、僕のチンチンを締めつけていて……」

「あ……うぐ……」

視界の中に、膝が入ってきた。

自分の膝だ…と分かると…。

自分が、今、どういう格好だか、頭の中に浮かんでくる。

 

身体を2つに折られて、尻の穴の中に、唯のチンチンを入れている。

 

どうして…。

どうして、そんなことをされているのか。

どうして、こんなにも痛いのか。

苦しいのか。

「あ…う……」

頭の中に浮かんでくる疑問を口にだそうと思うけれど。

悲鳴みたいな声しか出てこない。

 

涙のせいで、視界もどんどんとゆがんでいく。

 

勝ち誇ったような唯の顔も。

滲んでいく。

「ひぃ………」

「あぁ……切れて、だいぶ楽になりました…。

 ほら、チンチンが…楽に動かせる」

グチュグチュと音がして。

身体の奥が突かれる。

そのたびに、頭の中が、敷くはじけて。

痛いのと、突かれる感触で。

 

自分の身体が、モノになったみたいだ。

 

ただ、唯のチンチンを受け入れているだけの入れ物に…。

「ひ……ひ……」

身体が痙攣するのを止められない。

痛くて、滅茶苦茶で。

逃げ出したいのに。

身体が、全く自分の意思通りに動かない。

 

「唯先生…。恵山なんかの何がいいのか…って思っていたんですけれど…」

今までだまっていた佐藤の声が聞こえた。

 

そうだ…。佐藤も居るんだ。

今、腰を押さえているのは、佐藤だったろうか……。

 

こんな姿を、男2人が見ている…。

恥ずかしい…。

怒りも、痛みも、恥ずかしさも。全部の思が頭の中でグルグルとうねって。

全部一緒になっていく。

 

「こうして見ていると……なかなかいいですね……。

 いや……本当に…恵山なんて……」

「かわいいでしょう…。恵山先生は、僕の青春の大切な思い出なんですよ…」

涙でにじんでいるせいで、男達の顔が滲んでぼやけている。

ただ、ニタリとゆがんだ佐藤の口元だけが、見えた。

「私も、見ていると……興奮しますよ…」

「ひ……」

前髪が鷲づかみにされて、引き上げられた。

痛いはずなのに。

痛みという感覚を、下半身が奪ってしまっていて。

「あ……あ……」

「あぁ……先生のケツの穴、気持ちいいですよ。

 僕のチンチンをこんなにも締めつけてきて」

「ひ……」

唯が身体を揺らすと、背筋をピリピリとした痛みが這い上がってくる。

痛いというよりは、電気でも走っているような感じで。

「うぐ………く……くるし……」

腰が突き上げられる度に、勝手に涙がぶあっとでていく。

 

男に、犯されているんだ……。

 

分かりたくなかったけれど。

女みたいに、ペニスを入れられて、身体の中を滅茶苦茶に掻き回されている。

 

嫌でも、実感してしまう。

 

なんで、こんな目に遭っているのか分からない。

「ひ……ひぃ……」

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